From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (382)
第380話 三人のマナ指数
アルベルトはコントロールパネルの前でニッコリと微笑んでいる。
悠真は少し緊張した面持ちで前に出ようとした。その時――
「待て、待て! せっかくやからワイが先に測ってもらおうか。最近『マナ指数』を測ってなかったからな。丁度ええわ」
明人が悠真の肩を掴み、
躍
り出てきた。アルベルトの方を見て「別にええやろ?」と尋ねる。
「ああ、構わない。三人とも測ってあげるよ」
「よっしゃ! ほんならワイが一番や」
明人は軽快に歩き、巨大な測定器の中に入ってしまった。悠真は眉をひそめるも、「まあ、いいか」と思い後ろに下がる。
アルベルトがパネルを操作すると、測定器の上にあった『輪っか』がゆっくりと下りてきた。
回転する輪っかが光を放ち、明人の全身を測定していく。
しばらくすると、明人の足元まで下りた輪っかが戻っていった。一番上で止まり、装置のランプが消えると鉄柵が自動で開く。
「おお! もう終わったんか? けっこう早かったな」
外に出てきた明人はアルベルトに視線を向けた。
「おっさん! どやった? ワイの『マナ指数』。けっこうあったやろ?」
アルベルトはニッコリと微笑み、親指を立てる。
「ああ、凄い数値が出たよ。マナ指数は……4万7千821だ」
入口付近にいたプロメテウスのメンバーからどよめきが起きる。ミアは信じられないといった表情で目を見開いた。
「4万7千……アルベルトより高いマナ指数なんて……」
動揺はミアだけでなく、プロメテウスの
探索者
たち全員に広がっていた。
ざわつきが冷めやらぬ中、今度はルイが手を上げる。
「じゃあ、僕もいいですか?」
「お前も測るのか?」
悠真が眉間にしわを寄せる。
「俺の”マナ”を測るのが目的だぞ!」
「まあ、ついでだしね。僕も長い間測ってないから、どれぐらいマナが増えたか分からないんだ。いいでしょ? 悠真」
「う~ん、仕方ないか」
悠真が渋々承諾し、アルベルトが「ああ、いいよ」と答えたので、次はルイのマナ指数を測ることになった。
ルイは巨大な測定器の中に入り、ふーと息を吐く。
上から大きな輪っかが下りてきた。ルイの頭から足まで輪っかが下り、マナを測定していく。
三十秒ほどで輪っかは元の位置まで戻り、装置前部にある鉄柵が開いた。
ルイは装置の外に出て、アルベルトを見る。
「どうですか? 測定、うまくいきましたか?」
ルイに尋ねられたアルベルトは、満面の笑みを浮かべる。
「しっかり測れたよ。君のマナ指数は4万5千877だ。天王寺と並んで、かなり高いね」
再びプロメテウスのメンバーが唸り声を上げる。ルイもまたアルベルトのマナ指数を超えていたようだ。
自分のマナ指数が思った以上に伸びていたことに、ルイは気を良くして悠真たちの元へと戻ってきた。
「次はいよいよ俺の番だな!」
悠真はバシッと手を叩いてからマナ指数測定器に向かう。近くで見ると、その大きさをより実感できた。
――ホントにデカいな。これなら俺のマナでも測れそうだ。
悠真は測定器の中に入り、装置が稼働するのをジッと待った。
機械が光り始め、上部から輪っかが下りてくる。輪っかはゆっくりと回転し、床の近くまでくるとピタリと止まった。
コントロールパネルを見ていたアルベルトの表情が曇る。
「これは……」
輪っかが元の位置に戻り、悠真はマナ測定器から出た。
「どうですか? アルベルトさん」
互いにイヤホン型翻訳機を耳に付けているため、会話に支障はない。アルベルトは悠真を見て苦笑する。
「マナが高いと思っていたが、ここまでとはね。この測定器じゃなければ測れなかっただろう」
「じゃあ……」
「ああ、測れたよ。君のマナ指数は……84万2620。無色のマナは8万ほどあるようだ」
離れた場所にいたミアは、「なっ!?」と言って口を開ける。
プロメテウスのメンバーも信じられず、
各々
が顔を見合わせていた。ルイと明人は当然といった様子で悠真を見る。
「まあ、そんなもんやろう。それにしても無色のマナが8万って、だいぶ魔力に変えたみたいやな」
「それだけ強くなったってことだよ。”マナ”は無色のままじゃ、意味がないからね」
悠真はルイたちの元へと戻り、自分の右手を見る。
「確かに、かなり強くなった感じはある。あとは”蘇生魔法”さえ使えれば……」
悠真は右手を握り込み、険しい表情をする。
「やっぱり、難しそう?」
ルイの問いに、悠真は静かに頷いた。
「今ある魔力で何度か試してるけど、手応えは全然ない。使いこなせてないだけか、あるいは”蘇生魔法”なんてそもそもないのか……。どちらにせよ、新しく白の魔宝石を取り込んでも、うまくいく保証はないんだ」
黙り込んでしまった三人の元に、アルベルトが声をかけてくる。
「なにか悩み事かい? 僕でいいなら相談に乗るけど」
その言葉を聞いて、悠真たちはどうしたものかと互いの顔を見交わした。
◇◇◇
「なるほど……蘇生魔法か。そんなものがあるなら、世界はひっくり返るだろうね」
悠真たちは司令室に戻るため、施設の廊下を歩いていた。今いるのは悠真とルイと明人、それにアルベルトとミアの五人だ。
悠真は自分が世界を回っている理由をアルベルトに話した。
ミアも興味を示し、口を開く。
「でも、”回復魔法”にそんな効果があるの? 回復魔法の第二階層、第三階層の魔法なんて聞いたことないけど……」
ミアの言葉を聞き、悠真はそうだろうと思った。ただでさえ”回復魔法”は使い手が少ない。
白の魔宝石を大量に摂取した人間もいないだろう。
悠真は自分の右腕を上げ、手の平を開く。
「今分かってるのは、白の第一階層は”回復魔法”、第二階層は”光魔法”ってことかな」
「光魔法?」
アルベルトが怪訝な顔で尋ねてくる。悠真は「こういうのだよ」と、歩きながら自分の手に魔力を込める。
右手に光が集まり、剣のような形になった。
「こんな感じかな」
悠真の光魔法に、アルベルトは「おお!」と驚き、ミアも「天使たちの武器ね」と納得する。
「第三階層は”自己再生能力”。かなりの大怪我をしても、自動的に回復する」
この話にアルベルトは目を丸くした。
「【深層の魔物】たちと同じ能力だね。そんなことができるなんて……」
「ただ、第四階層以上が分からないんだ。ここでもらった『白の魔宝石』を飲み込めば、あるいは使えるようになるかもしれない」
悠真たちはチャールズが待つ司令室に再び入る。26000を超える”白の魔宝石”を取り込むために。