From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (403)
第400話 最大級の閃光
「おお!」
上空で見つめていた明人は、ルイの放った技に目を見張る。
「あのドラゴンを一撃で……必殺技みたいでかっこええやないか! ワイも負けてられへんな」
明人は地面を這いながらこちらに向かって来るドラゴンに視線を落とす。空を飛ぶことができない、翼のない竜種だ。
空中にいれば攻撃を受けることはないだろう。そう思っていた明人だが、竜の動きに眉根を寄せる。
赤いドラゴンは鎌首を持ち上げ、大きく体を仰け反らしていた。
「なんや、あいつ? なにをしようと……」
明人が下を覗き込んだ瞬間――竜は反動をつけ、口から火種を吐き出した。
「うわっ!」
明人は慌ててゲイ・ボルグの向きを変える。マグマの塊が飛んできたが、ギリギリでかわすことができた。
危ない、危ない、と言いながら高度を上げ、相手との距離を取る。
「こんな攻撃方法があったんか。油断も隙もあらへんな」
ふぅーと息を吐き、明人は逡巡する。
――ルイはこのドラゴンを一撃で倒したんや。ワイも一撃で倒さんと。
明人は以前から考えていた攻撃方法を試すことにした。
ゲイ・ボルグに魔力を流し、さらに上昇する。一定の高度に達したところで、明人は槍から飛び降りた。
全身に風を浴びながら落下していると、ゲイ・ボルグが高速で追ってくる。
明人は手を伸ばし、飛んできた槍の柄を掴んだ。
空中で槍を構え、矛先をドラゴンに向ける。大口を開けながら叫んでいる赤い竜。明人は槍から六つの矛先を飛ばし、周囲に展開する。
矛先は円を描くように浮かび、バチバチと細い稲妻がほとばしった。
円の中心にゲイ・ボルグを突き出し、矛先を赤いドラゴンに向ける。
――ワイが使う”滅殺の閃光”は細く、威力も小さい。でも、これなら……。
円の周囲に稲妻が走り、莫大な魔力が集まった。明人は力いっぱい槍を握りしめ、全力で魔法を放つ。
生み出されたのは太く、巨大な”滅殺の閃光”。
それは【黄の王】が放つものと変わらない魔法だった。
閃光が地面に落ちると、光と共にドラゴンを消滅させる。大地も吹き飛ばし、なにもかもを破壊した。
巨大なクレーターが現れた平地に、明人はゆっくりと降り立つ。ルイが駆けつけ、明るい表情で声をかける。
「やったね、明人。これでこのダンジョンは攻略だ!」
「ああ、ちょっとばかし魔物の能力に手こずったけど、ワイらにかかったらこんなもんや!」
明人はドヤ顔でゲイ・ボルグを肩に乗せた。微笑む二人の元へ、天王寺や石川たちも駆けつけてくる。
「明人、ルイ! よくやった」
天王寺は満面の笑みを浮かべて足を止める。石川も満足そうに微笑んだ。
「ここまで強い魔物を倒すとはな。二人に任せて正解だった」
相好を崩す石川。大勢の
探索者
たちも、最下層の魔物を倒せたことに喜び合う。しかし、そんな喜びも束の間、足元が小刻みに揺れ出した。
「崩壊が始まったか。すぐに戻るぞ!」
天王寺の言葉に、全員が気を引き締める。ルイと明人も
踵
を返し、集団と供に階層を出ようと歩き出した。
ルイはチラリと後ろを向く。
――魔宝石が出たかどうか分からないけど……明人が全部吹っ飛ばしちゃったからな。探すのは無理だろう。
ルイは視線を前に戻し、集団のあとについていく。
日本で行われた過去最大規模の攻略はエルシードとファメールの協力のもと、無事に達成することができた。
日数にして十三日。死者数ゼロという、あり得ないほどの成果を残して。
◇◇◇
北海道・白のダンジョンに入って二十日目――
悠真たちはとうとう最下層に辿り着く。
「ここが百九十一階層……恐らく、最後の階層でしょう」
秋山の言葉を聞くまでもなく、悠真はここが最下層だと確信していた。見渡す景色も、肌で感じる”マナ”の量も、今までの階層とは明らかに違っている。
「天使……まったくいないですね」
大浦がキョロキョロと辺りを見ながら
零
す。悠真もそう思った。深層部では天使が主たる魔物として襲ってきた。
なのにこの階層では天使が見当たらない。
だとしたら最後の魔物……【迷宮の守護者】は天使じゃないのか?
悠真たちはどこまでも続く平原を歩いて行く。
遠くには山々が霞んで見えるが、それが『迷宮の蜃気楼』であることは明らかだった。空は高く、太陽はないのに昼間のように明るい。
ここにいるのはどんな魔物だろう?
悠真の疑問は、秋山たちも同様に思っていた。
そんな彼らの前に現れたのは一体の魔物。白い人型の魔物で、五十メートルほど先を前屈みで歩いている。
慎重に近づこうとすると、別のところからもう一体の魔物が出てきた。同じ人型の魔物だ。
よく見れば周囲にも白い魔物が数体歩いている。どこから出てきたんだ? と悠真は怪訝に思うものの、魔物の姿形には見覚えがあった。
「あれは……オーガ?」
以前倒した『赤のオーガ』に似ている。悠真の疑問に、後ろにいた秋山が答える。
「間違いなくオーガです。白のダンジョンにいる魔物の一種ですね。ここまで見かけませんでしたけど、どうして最下層にいるんでしょう?」
秋山は不思議そうに小首をかしげたが、悠真に分かる訳がない。とにかく魔物たちがどこに行くのか確かめないと。
四人はオーガのいる場所へと近づいていく。だが、魔物たちは窪地のような場所に下りていき、姿が見えなくなってしまった。
悠真はさらに足を速め、傾斜のある坂を上って見晴らしのよい場所に立つ。
そこから見えたのは、ある種異様な光景だった。
大きな窪地の中に、白い魔物が大勢いる。
その中心に鎮座していたのは、周りのオーガの十倍はあろう巨大な魔物。見た目はオーガにそっくりだ。
「あいつが……このダンジョンの支配者!!」