From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (404)
第401話 オーガの王
白いオーガの集団は、巨大なオーガの前で
跪
いている。
まるで『民』を束ねる王様のようだ。悠真は秋山たちに「ここにいて」と言い残し、自分だけ丘を越えて窪地に入る。
ピッケルを構えつつ、相手に気づかれないよう慎重に足を運ぶ。
オーガの集団はこちらに背中を向けているため、反応する個体はいない。
悠真は『金属化』を発動し、黒い怪物へと変貌していく。その時、オーガの【王】はゆっくりと顔を上げた。
明らかに自分を見ていると思った悠真は足を止め、相手と睨み合う。
周囲にいたオーガたちも振り返り、悠真の存在に気づいた。
一斉に雄叫びを上げ、敵対心を剥き出しにする。
「けっこうな数がいるな……まあ、いいか」
オーガたちは血相を変えて駆け出し、悠真に向かって来る。王様だけは座ったまま動く気配がない。
「
余裕綽々
だな、上等だ!!」
悠真は地面を蹴り、一気に突っ込む。ピッケルに”火の魔力”を流し、脇に構えた。
襲いかかって来る三体のオーガに対し、迷いなく振り抜く。
オーガの頭が弾け飛び、爆発した。
一瞬で絶命した三体の魔物を残し、悠真は走り抜ける。
正面にきたオーガをピッケルで叩きつけた。頭がぐりゃりと潰れ、爆発して粉々になる。
やはり通常のオーガなど相手にならない。
――あのデカいのを倒さないと!
向かって来るオーガをかわし、巨大なオーガに迫る。さすがに無視する訳にもいかなかったのか、『王様』は重い腰を上げた。
中腰のままこちらを睨み、臨戦態勢に入る。
悠真はピッケルを振り上げ、地面を蹴って空中に飛び出す。オーガも右腕を引き、迎え撃つつもりだ。
「おおおおおおおお!!」
ピッケルと巨大な拳がぶつかり合う。激しい爆発が起き、悠真は後ろに飛ばされてしまった。
回転して着地し、顔を上げて前を見る。煙が晴れていくと、そこには右腕を失った王様が立っていた。取りあえず攻撃は通用するようだ。
そう思ったのも束の間、オーガは一瞬で腕を再生した。
「うっ! 魔法でつけた傷なのに……」
悠真は思わず一歩下がった。
――この火力で再生するなら、異常なほど再生能力が高いということ。半端な攻撃じゃあ倒せない!
悠真はチラリと周囲を見やる。通常の白いオーガもまだまだいる。
戦いが長引けば、下っ端のオーガは秋山たちを襲うかもしれない。危機感を持った悠真は決着を急ぐことにした。
「
血塗られた
鉱石
!!」
全身に赤い血脈が流れ、白い蒸気がうっすらと上がる。
悠真はピッケルに”雷の魔力”を流した。
唸り声を上げながらオーガたちが迫って来る。
悠真は凄まじい速度で移動し、あっと言う間に五体のオーガを引き裂く。
雷に
穿
たれた魔物は黒こげになり、二度と動くことはない。悠真は大地を駆け抜け、巨大なオーガに迫った。
咆哮を上げて向かってくるオーガ。
悠真は太い腕を掻い潜り、ピッケルを顔面に叩き込む。
爆発したように稲妻が弾け、オーガの顔の半分が吹き飛ぶ。悠真は手を緩めず、体勢を低くして、今度はオーガの右膝にピッケルを打ち込む。
大きな足は簡単に破壊できた。
膝から下が千切れたオーガはバランスを崩し、前のめりに倒れる。
止めを刺そうと一歩を踏み出した時、左右から通常のオーガが襲ってきた。気づけば後ろからもオーガたちが向かってくる。
「ちっ!」
悠真はピッケルに”風の魔力”を流し込む。
より広範囲に影響を与えるには、この魔法が最適だ。ピッケルを横に薙げば、三体のオーガがバラバラになって吹き飛ぶ。
さらに振り返って、今度はピッケルを地面に叩きつけた。
近づいてきた二体のオーガは爆風に巻き込まれ、ズタズタになって後ろに吹っ飛んでいく。間を置かずピッケルを振るえば、風が複雑に巻き起こり形を成す。
龍の姿となった”風”は空中を蛇行しながらオーガたちを食い散らかしていく。
だいぶ数が減ってきた。そう思った悠真だったが、後ろから圧を感じて振り向く。
そこにいたのは完全に体を再生させた巨大なオーガだ。こちらを睨みながら大口を開ける。
――なんだ!?
悠真が怪訝に思った瞬間――オーガの口から光が放たれた。
「おっ、と」
悠真は慌てて光をかわす。閃光は遙か彼方まで伸び、細い線となって消えていく。
「あれは”白い閃光”……こいつは第四階層の魔法も使えるのか」
巨大なオーガはギラつく目をこちらに向けている。この魔物なら第四階層より上、第五階層の魔法も使えるかもしれない。
悠真は身を低くし、ピッケルに”氷の魔力”を流す。
巨大なオーガが走り出すと、周囲のオーガたちも襲いかかってきた。悠真は足元のにピッケルを叩きつける。
冷気が噴き出し、大地から無数の
氷柱
が飛び出してきた。
巨大なオーガの体を貫き、その動きを止める。
通常のオーガは氷柱に触れただけで凍りつき、動かなくなった。
一瞬で凍死したのだ。悠真は飛び上がり、ピッケルを振りかぶる。
「おおおおおおおおおおお!!」
振り下ろしたピッケルを巨大なオーガは左腕で防いだ。だが、腕は凍りついてそのまま砕け散る。
オーガは
堪
らず後ろに下がった。
悠真はピッケルのヘッドに炎の魔力を宿す。一気に間合いを詰め、思い切り横に振り抜く。オーガの腹に直撃したピッケルは大爆発した。
後ろに飛ばされ、ゴロゴロと転がっていくオーガ。煙を上げながら藻掻き苦しんでいる。
悠真は手を緩めず、凄まじい速度で相手との距離を詰める。なんとか立ち上がろうとするオーガの腹を蹴り上げ、ピッケルで肩と頭を打ちつける。
次々に爆発が起き、断末魔の叫び声が聞こえた。
「まだまだ!!」
悠真は右手を長剣に変え、火の魔力を流す。悶えるオーガに近づき、燃え盛る剣を相手の腹に突き刺した。