From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (405)
第402話 熾烈な猛攻
「がああああああああああああああっ!!」
腹を焼かれたオーガは悲鳴を上げ、後ろに下がってそのまま倒れた。
悠真は剣にした腕を元に戻し、再びピッケルを構えて相手を睨む。連続で叩き込んだ攻撃はさすがに効いたようだ。
悠真は止めを刺そうと前に出る。その時、周囲にいたオーガたちが一斉に向かってきた。だが、悠真を攻撃するためではない。
巨大なオーガの周りに集まり出したのだ。
なにをする気だ? と戸惑っていると、オーガたちは巨大なオーガの体に飛びついていく。
オーガたちの体はドロドロと溶けていき、巨大なオーガと融合していった。
「なんだ……こいつは?」
残っていた通常のオーガは全て融合してしまった。巨大なオーガが、さらに大きくなったように感じる。
肩からは別の腕が生え、腕が四本に増える。角はより長く伸び、禍々しい顔はより凶悪性を増す。
「ふうううううううううううう」
低い唸り声が耳に触る。悠真は緊張した面持ちでピッケルを握る手に力を込めた。
巨大化して戦おうかとも思ったが、体内から力は湧いてこない。【王】の力が反応してないのだ。
――【王】の力を使うほどの敵じゃないってことか。だけど、かなり強いのは間違いない。
悠真はチッと舌打ちした。中途半端な力を持つ敵が一番厄介だ。
『
血塗られた
王の鉱石
』を使おうかとも思ったが、巨大化せずに発動したことはない。
――通常の状態で使っても大丈夫なのか? やったことないから怖いな……やめておくか。
巨大なオーガは雄叫びを上げて向かってくる。悠真は覚悟を決め、ピッケルを下段に構えた。
頭上から拳が降ってくる。
悠真は飛び退いてかわすも、二つの拳骨が地面を粉砕する。パワー自体も上がっているようだ。
――全力でやるしかない!!
血塗られた
鉱石
を発動し、ピッケルに氷の魔力を流した。地面を揺らし、巨大なオーガが迫ってくる。
悠真も負けじと突っ込んだ。
二体の怪物が衝突する刹那――悠真はピッケルを地面に叩きつける。
水晶クラスターのように氷が飛び出し、無数の
氷柱
がオーガを貫く。
「うおおおおおおお」
巨大なオーガが苦しげな声を上げた。なんとか氷を割り、後ろに下がって傷口を再生させる。悠真は追撃しようと踏み込む。
横に引いたピッケルのヘッドに、今度は火の魔力を流した。
一気に間を詰め、相手の腹に叩き込む。大爆発が起き、オーガは数十メートル吹っ飛ばされた。
地面を転がっていくもなんとか踏みとどまり、態勢を立て直す。
腹は
抉
れ、焼けただれている。
それでも雄叫びを上げると一瞬で傷が治ってしまった。
「腹立つな……もっと強い魔法で攻撃しないと」
悠真は歯を食いしばって全身に力を込める。背中がボコリと盛り上がり、ゆっくりと形を成す。それは二本の腕。
巨大なオーガと同じように、悠真も腕を四本に増やした。
だが、オーガとは決定的な違いがある。
新しく生み出された左手は、メタルレッドに色が変わり、竜の頭へと変化していく。さらに右手はメタルブルーに染まり、青い竜の形に変化した。
二つの竜頭が両肩の上に乗る。
それはさながらキャノン砲のよう。二門の砲塔はオーガに狙いを定め、その凶悪な
顎
を開いた。
「いっけええ!!」
発射されたのは真っ赤な火球。オーガに直撃すると大爆発が起こった。しかし、光の障壁で防いだのか、煙の中から現れたオーガは腕を二本失っているだけだ。
「だったら!」
次に放ったのは右のキャノン砲。冷気の塊が発射され、オーガの左足に直撃する。
爆発するように氷が広がり、水晶クラスターを生み出した。オーガは足を取り込まれ、その場から動けない。
悠真はピッケルを構えて走り出した。
ヘッド部分に”雷の魔力”を流し、相手との距離を詰める。
「これならどうだ!!」
渾身の一撃を叩き込もうとした瞬間、オーガは手刀で自分の左足を切断した。
間一髪で後ろに飛び退く魔物。
ピッケルは空を切り、氷の結晶に直撃する。稲妻が荒れ狂ったように周囲に放出された。オーガは後ろに下がりつつ、左足を再生させる。
傷一つない姿で仁王立ちし、悠真にギラつく視線を向けた。
「こいつ……ホントに鬱陶しいな」
悠真も構えを取ったまま足を開き、巨大なオーガと相対した。
◇◇◇
「なんなんだ、あの戦い!?」
丘の上で見ていた秋山が険しい顔をする。エルシードで何度も戦いに参加していた彼でも、ここまで激しい戦闘は見たことがなかった。
北沢も同じように思ったらしく、震える声で言葉を発する。
「あれが人間……いえ、あの人、本当に人間なの!? 相手も相当強いのに、それを遙かに上回るぐらい強いじゃない!」
三人は戦場に視線を向ける。
三鷹悠真は相手を爆発させ、氷を生み出し、稲妻が地面を走ったかと思うと、今度は竜巻を起こして巨大なオーガを吹っ飛ばしてしまう。
その威力は絶大で、オーガは手足を失い、体が損傷していく。
だが一瞬で再生し、また戦いに身を投じる。信じられないぶつかり合いだ。四つの魔法を自由自在に使いこなす”黒鎧”に対し、どんな傷でも治してしまう魔物。
「どちらも莫大な魔力を使ってる。そんなに長く保つ訳がない」
秋山の言葉に、大浦が大きく頷く。
「うん、魔力が先に切れた方が負けると思う」
三人は悠真の魔力が切れるのを心配した。だが、とうの悠真はさらにギアを上げ、より強力な魔法を発動する。
“風の龍”と”雷の龍”が現れ、空中を泳ぎだした。