From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (47)
第47話 身体測定
その後も血圧、心電図、身長や体重、尿検査など。人間ドックか? と思うような検査が続いた。
最後に連れてこられた部屋に、悠真は目を丸くする。
「これは……」
そこには大掛かりな機械装置があった。かまくら型の装置に導線やダクトパイプが幾重にも繋がっている。
機械部分が全て剥き出しで、とても正規品には見えない。
アイシャが装置とケーブルで接続されているパソコンを操作すると、正面のハッチが上部に向かって開く。中には人一人が座れる椅子があった。
「まず、そこの椅子に座りな」
「こ、これ、なんですか?」
悠真が恐る恐る聞くと、アイシャは「フンッ」と鼻を鳴らす。
「私が作った‶マナ指数測定器″さ。そんじょそこらの物とは精度が違う。0.0001単位で指数が出るし、細かい電磁波の違いも測れるからな。君のマナが上がらない理由も分かるかもしれんぞ」
「は、はあ……」
悠真は装置に目を移す。確かに『青のダンジョン』にあったマナ測定装置と雰囲気は似ているが……。
これは一個人が作った物だ。本当に入っていいのか不安になる。
「これ……大丈夫なんですか? なんか怖いんですけど」
「大丈夫だ。天才の私が作ったんだぞ。まだ試作品だが、それでも今あるマナ測定器の中では、もっとも安全で高性能。特許出願中の代物だ。安心して入れ!」
悠真は後ろからついて来た社長に視線を送る。その視線に気づいた社長は親指を立て「まあ、がんばれ」といった表情で悠真を見る。
――絶対、無責任に考えてる!
嫌な感じはしたが断る訳にもいかず、悠真は渋々装置の中へと入った。
シュウウウと不穏な音を立てながら、ハッチが閉まる。外から「じっとしてろよ」とアイシャの声が聞こえてきた。
ドキドキしながら座っていると、ウィィィィィや、ドドドドドッなど、恐怖を煽るような音が鼓膜の奥まで響いてくる。
光が点滅し、アラームのような音までする。
冷や汗が
額
に滲む。五分ほどで光りや音が収まり、完全に装置が停止すると自動的にハッチが開いた。
「よーし! 出ていいぞ」
外に出て、悠真はホッと息をつく。
「その装置の結果はいつ出るんだ?」
社長が尋ねると、アイシャはおどけたように首を振る。
「まだ試作品だからな、すぐに出ない。他の検査結果と一緒にメールで送る。それでいいだろ?」
「ああ、悠真のマナが上がらない理由さえ分かればそれでいい」
社長がドアを開け帰ろうとした時、アイシャはついでとばかりに声をかけた。
「ああ、それと
次
の
探
索
の
ス
ケ
ジ
ュ
ー
ル
もすぐに出る。それも一緒に送るからな」
社長は「分かったよ」と言って、そのまま部屋を出た。悠真もアイシャにお礼を言って頭を下げ、社長の後をついていく。
◇◇◇
「いや~、それにしても変わった人でしたね」
車に乗り込んだ悠真が零す。
「まあな。長い付き合いだが、確かに変人と呼んでもおかしくない奴だ」
社長が言うなら相当だろう。と悠真は心の中で笑ってしまう。
「とは言え生物学者としての能力は確かだ。任せておけば大丈夫だろう」
「はい」
――アイシャさんのことを信用しているようだ。なるほど、仲がいいのか悪いのか分からないと言った田中さんの気持ちがよく分かる。
「明日は茨城にある『赤のダンジョン』に行こうと思ってる。悠真、お前も一緒に来い!」
「え!? いいんですか?」
「ああ、本当は‶水の魔法″を使えるようになってから連れて行こうと思ってたんだが、今は調べてる最中だからな」
「足手まといじゃないですか?」
「ハッハッハ、俺も田中さんもアマチュアじゃないんだ。一人ぐらい見学者がいてもどーてことねーよ。それに深層まで行く訳じゃねーしな」
「分かりました。勉強させてもらいます!」
「おう!」
社長はエンジンをかけ、ミラーを確認しながらバックで車を出す。狭い通路に車体を出すと、そのままアクセルを踏んで工場を後にした。
◇◇◇
翌日の朝、社長のジープラングラーに乗り込み、一路茨城の『赤のダンジョン』へと向かっていた。
助手席には舞香。後部座席には悠真と田中というD-マイナー全員での出陣だ。
常盤自動車道を北上し、つくば市に入る。目的のダンジョンがある石岡市まではもうすぐだ。
「悠真君、今日はお弁当作ってきたからね。お昼は楽しみにしててよ」
助手席に座る舞香が振り返り、明るく話しかけてきた。
「はい、ありがとうございます! 舞香さんもダンジョンに入るんですか?」
「うん、まあ私も一応
探索者
だしね。深くまでは潜れないけど、浅い層までなら何とかサポートできるよ」
ハンドルを握る社長も話に入ってくる。
「舞香は水魔法が使えるからな。今の悠真よりはよっぽど戦力になる。今日は悠真の護衛役として来てもらってんだ」
「ええ!? 俺の護衛ですか?」
男としては、なかなかきつい話だ。
「もう大袈裟だよ。社長と田中さんのサポートでダンジョンに入ることはよくあるから、なにも今日が特別って訳じゃないよ」
笑顔で否定する舞香だが、悠真が魔法が使えず役に立たないのは事実だ。いざとなれば‟金属化”で自分の身ぐらいは守れるが、人前で使う訳にもいかない。
そんなことを言っている間に、目的地が遠目に見えてきた。
「あれが……」