When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (11)
第11話 謎の獣人少女キャロル
「なるほど、キャロルていうんだ?」
道を歩きながら自己紹介を行う。あれから、ちょうど彼女も冒険者ギルドに用事があるというので一緒に向かうことにした。
小柄な身体で前を歩くキャロルはしきりに周囲に注意を払っている。頭部にある耳をパタパタと動かしており、その動作を見てなごむ。
「クラウス、あれ食べたい」
彼女は無表情で屋台を指差した。
どうやら、案内するための対価を要求しているようだ。無表情ながらもクリっとした瞳を向けてくるので、俺は自分の分も含めて串焼きを買うと、彼女に渡した。
「んぐんぐ」
「顔にソースがついてるぞ」
一心不乱に頬張るキャロルの口元に、ソースがついているのを指摘した俺は、ハンカチを取り出し彼女の口元を拭った。
昔、セリアにしてやったことを思い出すと懐かしい気持ちになった。
キャロルは目を瞑り顔を差し出すとされるがままになっている。俺は綺麗に汚れがとれたことを確認するとキャロルから離れる。
「それで、クラウスは冒険者になりたいの?」
串焼きを食べ終えたからか、キャロルは周辺の店から興味を失い俺に話し掛けてくるようになった。
「一応、地元の街では冒険者をしていたんだけど……」
現時点で冒険者をやっていることを俺は告げる。
「ふーん、どんな依頼を請けたの?」
キャロルは特に興味がある訳でもないのか、到着するまで場を繋ぐためなのか質問を続ける。
「主にハーブの収集かな」
「それだけ? 戦闘経験は?」
耳をピクリと動かすと、キャロルは首を傾げた。
「単独でならゴブリンとやり合っただけだよ」
俺はアゴに手を当てると、自身が戦ったモンスターとの戦闘を思い出す。
戦ったのは王都に来ることを決める前なので、今ならもっと余裕をもって倒せる気がする。
「ふーん、でも、王都ではハーブの依頼、ほとんどないよ?」
「えっ!? どうして!」
予想外な情報に俺は驚き声を上げ、キャロルに質問する。
「錬金術士たちが栽培して販売もしているから、それより安い報酬でしか依頼がない」
そう言われ、店先を指差す。
俺は慌ててそちらを見るとハーブの販売がされており、値段が地元の冒険者ギルドでの買取金額よりも安かった。
「えっと……。ハーブの栽培は難しいのではなかったっけ?」
だからこそ、街の冒険者ギルドではハーブの収集に高値をつけていたのだが、これはどういうことなのか?
俺が聞くと、彼女は首を横に振る。
「難しいのではなく、設備が必要で費用がかかるだけ」
なんでも、王都では高価な魔導具を使うことで、環境を再現することができるらしく、室内にハーブの栽培施設があるらしい。
維持するのにはそれなりに費用が発生するのだが、現在のハーブの買い取り価格を考えるとこちらの方が安くなるらしい。
そのせいで、ハーブの単価が下がってしまい、依頼を請けたがる冒険者の数も減っているのだとか……。
「まあ、いつまでもハーブに頼っているわけにもいかないけどさ……」
正直、あてが外れた部分もある。
こちらでもハーブを収集して金を稼ぎ、余裕ができたら国家冒険者への準備に入ろうと考えていたからだ。
「ふーん、何か目的でもあるの?」
キャロルは顔を上げ、俺の顔を覗き込んでくる。俺の態度をみて、訳ありだと察したらしい。
「目的は……国家冒険者になること、だな」
両親やセリアから認めてもらい、国家冒険者になる。それが今のところ、俺が掲げている目標だ。
勿論その先にはやりたいことも存在しているのだが、国家冒険者になれなければ街に戻り父親の仕事を手伝うことになうので、キャロルに言う必要もないだろう。
「国家冒険者、なるのかなり難しい。比率で言うと普通の冒険者1000人に対して1人」
難関だということは、街にいた冒険者ギルドの受付の女性からも聞いているのだが、改めてキャロルから事実を突きつけられてしまい、俺は思わず息を呑んだ。
「ん、冒険者ギルド。着いたよ」
そんな俺の様子とは関係なく、キャロルは看板を指差す。
ちょうど、そのタイミングで冒険者ギルドへと到着したようだ。
目の前には大きな建物があり、大勢の冒険者が出入りしている。
流石は王都の冒険者ギルド、施設の規模が街とは比較にならない。
おそらく、毎日大量の依頼が舞い込み、沢山の冒険者が依頼を請けているのだろう。
まず俺は、ここからスタートしなければならない。
「ありがとう、助かったよ」
俺がキャロルに御礼を言うと、彼女は右手を上げ無言で頷いた。
そしてそのまま右手を首元に突っ込み鎖に引っかけると装飾が服の下から出てきた。
『国家冒険者の資格を得た方には特別な装飾がついた首飾りが証として与えられます。身に着けているだけで羨望の眼差しで見られるくらい、凄く、美しいものなのですよ』
金色に輝くその装飾は、剣と杖を象ったものだった。
「頑張ってね、クラウス」
最後に少しだけ笑ったキャロルは、颯爽としながら冒険者ギルドへと消えていく。
彼女は、俺が目指す国家冒険者だった。