When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (15)
第15話 Cランクモンスター討伐
王都に滞在してから二週間が経過した。
その間、俺は北門を出て毎日モンスターを狩りまくっていた。
ゴブリンやコボルトにオークと、平原を歩き回り倒していく。
そのお蔭もあってか、段々と戦い方も上手くなり、今では呼吸をするようにモンスターを屠れるようになっていた。
これならば、トロル討伐も問題なく行えると思っているのだが……。
「全然、トロルの影も見えない」
索敵する場所が悪いのか、はたまた運が悪いからか、一向にトロルと遭遇することができなかった。
「本日の報酬です」
冒険者ギルドで報酬を受け取る。低ランクモンスターの討伐とはいえそれなりの数なのでそこそこの報酬を得ている。
故郷の街なら何人かがこちらを見て、ジークあたりがたかりに来てもおかしくないのだが、王都の冒険者はそのような小者じみた言動をとる者は少ないようだ。
王都で冒険者を続けるにはそれなりに実力が高くなければならず、そのような行為をするくらいなら自分で仕事を請けた方が早いからだろう。
お蔭で、何の憂いもなく資格取得に専念できるのだが……。
「これは、ちょっと狩場を変えた方がいいかもしれないな?」
二週間狩りをしてトロルに遭遇できないということは、思っているよりも数がいないのではないか?
「他のCランクモンスターに狙いを切り替えた方がいい気がしてきた」
自身の戦闘経験からトロルの討伐を決めた俺だが、毎日の冒険でそれなりに強くなってきた実感があるので、トロルにこだわり時間を浪費するのを避けることにした。
「すみません、国家冒険者の資格試験を受けているんですけど」
「はい」
「この辺で討伐できる、トロル以外のCランクモンスターって何ですかね?」
「そうですね……、北門を出たところの森に生息するダイアウルフ、西門を出でしばらく進んだ湿地帯に生息するポイズントード、東門から出て数日移動した鉱山にいるゴーレムあたりでしょうか?」
受付の女性は口元に手を当てると、ツラツラと場所とモンスター名を教えてくれた。
「なるほど、とりあえず鉱山は遠いし、毒はちょっと怖いので、ダイアウルフが無難ですかね?」
「そうですね、クラウスさんはこれまでソロで冒険をされていますので、何かあった時を考えるとそれが最良かと思います」
本来なら、誰かしらとパーティーを組む方が望ましいのだが、一度パーティーを組んでしまうとそれぞれの都合を合わせなければいけなくなる。
資格取得に必要な案件を優先したい俺に対し、日々の稼ぎを優先したい冒険者では意見が合うはずがない。
それに、俺が女神ミューズから授かった能力もある。
これまであまり気にしていなかったが、おそらく俺は与えられた力のお蔭で成長しやすくなっている。
あくまで体感になるのだが、普通の冒険者が一年かかるところを三ヶ月……下手すると一ヶ月でクリアしているのだ。
そんな中パーティーを組めば、当然疑われるだろうし、スキルに関してもおいそれと使うわけにもいかない。
なので、こうして単独行動をしているのだ。
「とりあえず、北門の森なら何度か近くまで行ったことがあるので、見てきます。ついでに何か良さそうな依頼ってありますかね?」
「そうですね……、二つあるのですが、一つめは今のクラウスさんではかなり厳しいと思うのですが、森にいるコカトリスの討伐依頼でしょうか?」
「コカトリスって、尾が蛇の鳥型モンスターですよね?」
確か、触れる者を石化させる特殊な攻撃をしてくるモンスターで、その対策をしていないと戦ってはいけない危険な相手だ。
「ええ、ある意味ポイズントードよりも厄介で、致命的な相手です」
俺は一瞬、森に入るのを諦めようかと考えるのだが、そうなると鉱山に行くことになり、最低でも一週間は使ってしまうことになる。
コカトリスは足自体は速くないので、もし遭遇したら全力で逃げれば済むだろう。
「もう一つは?」
俺は受付の女性にもう一つの依頼を確認した。
「他にはダイアウルフの毛皮の納品依頼ですね」
何でも、とある金持ちがダイアウルフの毛皮でコートを作るらしく、素材を募集しているようだ。
これならば、俺のやりたいこととも一致している。
俺はダイアウルフの毛皮採集依頼を受けると、森へと向かうのだった。
森に入って数日が経過した。
その間、俺は王都に戻ることなく、森の中で生活をしている。
それというのも、平原と違い、森の中では進行速度が落ちるからだ。
一応、ハーブ収集で森に入るのはなれているのだが、ここは故郷の森とは違って木々が広がっている範囲も広く、様々な生き物が生息している。
ダイアウルフなどのモンスターはランクが高くなればなるほど森の奥深くに生息しているので、討伐するためにはそれなりに深く分け入る必要があった。
そんなわけで俺は数日掛けて森の探索を行っているのだが……。
「……やっと見つけた」
茂みの奥で生き物が動く音が聞こえる。
銀色の毛並みを持つ、大型犬を一回り大きくしたようなモンスターだ。
ダイアウルフは何やら餌を食べているらしく、地面にはツノを生やしたウサギ――ホーンラビットの死体があった。
獲物に気を取られているのなら好都合。俺は気配を完全に殺すと、背後からダイアウルフに迫った。
『ガルッ?』
勘が鋭いらしく、俺が近付くとダイアウルフが顔を上げる。口元にはホーンラビットの肉がこびり付いていて、鼻先は赤い血で濡れている。
「……ッ!」
これ以上は無理。そう判断した俺は、少しでも不意を突ければ儲けものと考え、茂みから飛び出しダイアウルフに襲いかかった。
『ガルルルッ!』
即座に臨戦態勢を取ったダイアウルフは、餌を食うのを止め、俺に襲い掛かってきた。
――ガキッ!――
「くっ! 重い……!」
明らかに俺よりも重たい体躯をしている獣が突進してきたのだ。俺はどうにかしてその突進をずらすと、攻撃を捌いた。
「流石はCランクモンスター。これまでとは格が違う」
オークの攻撃など温いと感じていたが、ランクが一つ上がるだけでこうも強くなるとは……。
『ガルルルル!』
だが、強敵相手に何の準備もしないで挑むわけもない。
俺は、ふたたび襲い掛かってきたダイアウルフに合わせて皮袋を取り出し中身を巻き散らした。
『ギャインッ!?』
目を細め、呼吸を止めてダイアウルフの動きを見る。
今俺が撒いたのは、市場で売っているトウガラシなどの香辛料を粉末にした物だ。
ダイアウルフは鼻が利くので、これを吸い込んでしまうと相当苦しんでしまう。
これは、テイマーギルドの係員さんから教えてもらったことなので、彼女には後日一杯奢ろうと思う。
苦しそうに地面をのたうち回るダイアウルフ、普通に戦えばCランク相当で今の俺でも苦戦するのだろうけど、こうして隙を晒している状況では強さなど関係ない。
「覚悟っ!」
俺は剣を振るうと、ダイアウルフの命を刈り取るのだった。