When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (31)
第31話 ステシア王国王立アカデミー
現在、俺は王都のとある場所にきていた。
セリアの学校より王城がある中心に近く、広大な敷地を持つ王都で最大のアカデミー、『ステシア王国王立アカデミー』。
このアカデミーは、将来国の中枢を背負って立つ人材を育成していて、騎士や魔導師、錬金術師に鍛冶師など国の主要な分野を担うため、専門の講師がつきっきりで指導をしている。
在籍している生徒の数は1000人だが、受験倍率は50倍ということで、入学するだけでも非常に厳しく、貴族や商人の子息娘は幼少のころから家庭教師をつけて学んでいるのだとか……。
そんな場所の入り口付近には現在、15台の馬車と15人の教師と30人の護衛の冒険者、そして、30人の生徒が集められていた。
俺たち冒険者は馬車を背に立ち、教師が生徒に説明をしているのを聞いている。
事前にセリアから得た情報では、ステシア王立アカデミーでは毎年、成績上位者を集めて野外授業を行うらしい。
手紙に書かれていた集合場所と日程、それに学生の間で流れている噂についてセリアはできる限りの情報を俺に伝えてくれたからだ。
そのお蔭もあってか、俺は事前に心の準備ができていたのでこうして動揺することなく待つことができる。
周りの護衛の人間を見る。半分は俺と同じ国家冒険者の資格を得るための受験生、残り半分は現役の国家冒険者だ。
今から俺たちは、グループに分かれてこの30人の生徒たちの護衛をすることになる。
もっとも、アカデミー1000人の中から選ばれたエリートらしいので、戦闘もある程度こなせるので、危険に陥らないように見守るのがメインとなるだろう。
「それでは、これより野外授業を開始する。それぞれ指定された馬車に乗り込むように」
教師の説明が終わり生徒たちが馬車へと乗り込んでいく。
その表情は野外に出ることに対する不安が一切ないのか、緊張することなく笑っていた。
「けっ、学生さんはいいねぇ。親の金で安全に学べてよぉ」
隣に立つ冒険者の男が悪態をついた。確か名前はブレイズ。歳は三十代後半、剣を使って戦うらしい。
「まあ、こうして安全を確保しながら学べるに越したことはないでしょう。俺たちの仕事は彼らの身の安全を保障することですから、頑張りましょう」
「そういうてめぇも、あいつらと年齢が変わらねえじゃねえか。どうせコネかなんかで受験してるんだろ?」
確かに、俺はマルグリッドさんの計らいで推薦人を集めていないにも拘わらず試験に参加させてもらっている。そう言う意味では彼の指摘通りなので言い返すことはできない。
「はぁ、この歳になってやっと試験資格を得ることができたのに、ガキの御守とガキの尻拭いとは俺も運がねえぜ」
そう言って男は馬車の横に移動していく。基本的に二人で1つの馬車を担当することが決まっており、俺はブレイズさんと組むことになっていたからだ。
胸元で、もぞもぞとパープルが動く気配がした。
事前の通達でテイマーが試験に連れて行ってよいモンスターは1匹までと決められていたので、今回は目立つのを避けるためにフェニではなくパープルを選んだのだ。
(これは確かに、戦うのとは別の苦労があるかもしれないな)
事前にセリアから色々と注意点を教えてもらっていたのだが、その指摘が現実味を帯び始め、俺は溜息を吐くと、どうか無事に護衛依頼が終わるようにと女神ミューズに祈るのだった。
★
「はぁ、何で私たちがこんな狭い馬車で寝なきゃいけないのよ」
馬車の椅子を簡易ベッドにして、そこに横になっているメリッサは窮屈さに顔をしかめた。
王都の南門を出て街道を進み夕刻となった。予定通り野営広場に到着したアカデミーの一団はここで夜を明かすことになる。
アカデミーの生徒はそのまま馬車に泊り、護衛の冒険者は馬車の外で野営の準備をしている。
食事にしても、護衛が作ることになっているので、生徒たちは特にすることなく、本日の移動中について話を咲かせている。
「それにしても、冒険者だっけ? 大したことないわね」
今日一日を振り返るとメリッサは冒険者をそう評した。
移動中、何度かゴブリンやコボルトと遭遇したのだが、ブレイズを含めた何名かの冒険者はモンスターに接近して剣や槍などで戦っていたのだ。
「あの程度、私たちなら魔法で近付ける前に倒しちゃうし、時間の無駄よね」
授業ということもあるので、戦闘の間、生徒は見学する義務があり、馬車も止めてしまうので移動時間をロスしてしまう。
「メリッサ、言い過ぎです。あの方々は在野で力を磨いてきたのです、私たちのように専門の教師に教えていただけるわけではないのですから、不備を責めても仕方ありませんわ」
それを聞いていた女子生徒は本を閉じるとメリッサを咎めた。
「まあそうなんだけどさ、ロレインは現状に満足しているの?」
メリッサはムッとした表情を浮かべると、ロレインに不満はないのかと問いただす。
「……まあ、割とストレスは感じていますね」
メリッサ程ではないが、狭い馬車に一日中押し込められ、ただ移動するという退屈さにロレインもうんざりしていた。
「だったらさ、こういうのはどうかな?」
簡易ベッドから勢いよく身体を起こし、もう一人馬車にいた女子生徒が明るい声を出す。
「何か良いアイデアでもあるのですか、ルシア?」
ロレインは首を傾げると、ルシアの提案を聞く。
「うんうん、他のグループの子たちにも協力してもらってさ――」
翌日から、クラウスたち受験者の本当の意味での試験が始まるのだった。