When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (33)
第33話 ディアボロスの魔城
「ここが今回、野外授業を行う【ディアボロスの魔城】だ」
王都の南門を抜け、馬車で五日程進んだ場所にある廃城に到着した。
途中から、周囲には草木が一本も生えておらず生き物の気配も消えていた。
ここは、かつて魔王が君臨していた魔王城だったという伝承がある。
数百年前にどこからともなく現れた勇者が魔王を討伐したのだが、魔王は最後に呪いを放ち、この地を人が住めない土地にしたのだという。
以来、この城にはアンデッドモンスターが湧くようになり、余程の者でなければ生きて帰れない魔城となった。
今回の目的は、この魔城の調査で、調査のメインは教師で、アカデミーの生徒はその助手だ。
「滞在するのは二日間、それまでの間にアカデミーの生徒はこの城内を調査して後日レポートを提出してもらう」
教師が調査する場所は決まっているのだが、自分たち以外の視点で調査をすることで何か発見できるものがあるかもしれない。
それを期待しての同行で、この調査費用の半分は国が負担している。
だからこそ、国家冒険者試験にも使われているのだろう。
教師による一通りの説明が全員にされる。
「有事の際は冒険者に従うように」とか「危険と判断した物には触れず、教員か国家冒険者を呼ぶように」など。
これまでの道中で、自分たちがモンスターと戦えると知ってしまった生徒たちは、真剣に話を聞きながらも口元が緩んでいる。
これが不安要素にならなければよいのだが……。
教師の話が終わると、班分けが行われた。
とはいっても、それほどメンバーが変わるわけではない。
基本的に、護衛していた馬車のメンバーと一致しており、二十人の冒険者で三十人の生徒を護ることになる。
つまり、俺はブレイズさんとコンビを組み、メリッサ・ロレイン・ルシアの護衛だ。
「それじゃあ、早速行きましょうよ!」
まず、メリッサが早々に調査を促した。
この五日間見ていたが、このグループを表向き仕切っているのは彼女だ。
彼女が行動を口にして、残りの二人が同調する。
「あぁん、まってよー、メリッサ」
「もう、仕方ありませんわね」
ルシアとロレインが後ろからついて行く。三人は仲が良いようで、道中ずっと楽しそうに雑談をしていた。
「って、おいっ! 俺たちは無視かよっ!」
ブレイズさんが怒りを露わにしながら追いかけメリッサたちと何やら話している。
双方の表情を見る限り、とても友好的とは言えなさそうだ。
「何かあった時は頼むな」
俺は胸元に潜んだパープルを撫でると、何が起きても対処できるように気合を入れ直すのだった。
城内に入ると、早速モンスターが襲ってきた。
出現したのはEランクモンスターのスケルトンだ。
全身が骨だけのこのモンスターは、剣や棍棒などの武器を持ち襲い掛かってくる。
「雑魚が、どけえええええええええええっ!」
だが、その動きは鈍いので余程のことがなければ攻撃を食らうことはない。
今も先頭に立つブレイズさんが一人で蹴散らしていた。
「あのくらい、私たちだって一瞬で倒せるのに……」
メリッサは不満そうにそう漏らした。
城に入る際、ブレイズさんが強く言い、三人を後方に下がらせたからだ。
現在、俺とブレイズさんが前と後ろに分かれて警戒している形になる。
護衛依頼を果たすうえで、これがもっとも安全な体勢だったからだ。
「はぁ、こんなおじさんより、正規の国家冒険者に護衛してもらいたかったなぁ」
今回の班分けだが、護衛の冒険者は二人一組となり三人の生徒を護衛することになる。
国家冒険者の内、五名は護衛に加わるのだが、残りの十名は教師の護衛であったり、魔城内を単独で動き回っている。
厄介なモンスターがいた場合の排除と、不測の事態が起きた際に駆け付けるための巡回だ。
「まあまあ、同じ年くらいの人もいるしね。メリッサ」
ルシアが意識を俺に向けてくる。
「その年で受験生ということはさぞや優秀なのでしょう。クラウス様、何かありましたらよろしくお願いしますね」
ロレインは笑いながらもどこか探るような視線を俺に向けてきた。
(聞いてた通り……、いや、それ以上だな)
この試験を受けることになった際、アカデミーの生徒たちが張り合ってくるであろう忠告をセリアから聞いていた。
なんでも、アカデミーの生徒と受験生が険悪になるのは毎年のことらしく、試験が終わった後には「国家冒険者より活躍した」などという武勇伝が学生の間に流れるのだとか。
ブレイズさんはそのことを知らないらしいが、彼女たちは意図的に張り合ってきていることを俺は知っている。
「もっとも、今のところはただ歩いて付いて来てるだけみたいだけどさ」
メリッサが軽蔑するような視線を俺に向け、辛辣な言葉を発した。
これまでの日程で、俺は(・・)モンスターを一匹も倒していない。戦闘能力に疑問を抱いたのだろう。
「ええ、任せてください。必ず、全員無事にアカデミーに帰しますから」
これから先は、俺も戦う機会があるだろう。
俺は彼女の言葉を流すと、独特な雰囲気を放つ魔城により一層の警戒心を引き起こすのだった。