When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (34)
第34話 調査初日
「ねぇ、おじさん。まだなの?」
「くっ! 黙って見てろっ!」
ブレイズさんが数匹のレイスと戦っている。ブレイズさんは剣を振り回すのだが、レイスの動きは不規則で、攻撃範囲に入ったかと思えばひらりと躱してしまう。
普段のブレイズさんならば冷静に相手を引き付け、一撃で倒すのだろうが、メリッサたちが煽るのでそれができないでいた。
宙を飛びブレイズさんを翻弄するレイス、実態をもたないモンスターで、魔法か魔力剣による攻撃でないと傷つけることができない。
一応、Cランクモンスターのくくりとなる。
Cランクモンスターならば国家冒険者の第一試験で討伐している俺たち受験生だが、流石に魔力が必要なモンスターとの討伐経験がある者は少ない。
魔力剣は高額なので、こういう特殊な場所に近付かない限りは通常の武器でことたりる。ブレイズさんが持っているのは斬れ味が鋭いロングソードだった。
では、絶対に倒せないかというとそんなことはない。
レイスの動力は魔力で、魔法を使うたびに消耗していくので、攻撃さえ避け続ければ倒すことが可能。そして、Cランク冒険者ともなれば見え見えの攻撃を避けるのは造作もないのだ。
それでも、複数のレイスにおされているブレイズさんに、俺は声を掛けた。
「ブレイズさん、手伝いましょうか?」
「ここは俺の活躍の場だ、お前も引っ込んでろ!」
俺が手を貸そうと提案するのだが、これまでメリッサたちに活躍の場を横取りされて焦っているのか、ブレイズさんは一人で倒すことに拘っている。
これまで散々仕事を妨害されてきたしわ寄せがここにきた。彼は試験の合格を焦るあまり、連携をとることを拒絶してきたのだ。
「うーん、もう待ってられない。【ウインドブレス】」
俺が介入すべきか悩んでいると、ルシアが魔法を放つ。
「なっ!」
突風が吹き、ブレイズさんがバランスを崩す。レイスにはさして影響はなく、影のような矢でブレイズさんを攻撃した。
「【浄化の炎】」
ブレイズさんとレイスの間に、俺は【浄化の炎】で壁を張ると、レイスの魔法を遮った。
「「「「なっ!?」」」」
四人が驚愕の声を上げ俺を見る。
「全員、レイスの動きに注意!」
レイスに感情はなく、驚いた隙を見逃さなかった。
一番近くにいたレイスが、魔法で攻撃をしたルシアに襲いかかる。
「きゃあああああああああっ!」
接近し、魔法を放つ動作をするレイス。冷静に立ち回れば避けられない攻撃ではないが、三人は突然の事態に完全に固まってしまっていた。
――シャッ――
『キキキ……キィ?』
「えっ?」
頭を抱えて目を瞑っていたルシアが目を開いた。
「大丈夫ですか?」
レイスがルシアに攻撃を加えるよりも早く、俺が剣で斬り伏せたのだ。
「おま……何を?」
ブレイズさんが無防備な様子で俺を見ている。せっかくレイスの動きが止まっているチャンスなので、俺はこの隙を見逃さず攻撃をすることにした。
「【フェニックスフェザー】」
振り向きざまに【フェニックスフェザー】で炎の羽根を二本飛ばし、残るレイスに直撃させる。
「す……凄い……」
「綺麗……ですわ」
メリッサとロレインの声が聞こえる。
『キ……キ……キィ……』
レイスは炎で燃え尽きると消滅した。
その日の調査を終え、教師や試験官がいる城の中庭へと戻ってきた。
周囲には強力な結界が張られていて、モンスター避けの対策はバッチリだ。
このモンスター避けの結界だが、パープルには影響がない。俺の従魔ということで問題なく通ることができた。
そんなわけで、この後は食事を摂り、ゆっくりと休もうかと思っているのだが……。
「なんだか、随分とボロボロになっている人が多いですね?」
周囲を見回すと、冒険者・アカデミー生徒ともども、かなり疲労している様子が伺える。
「調査途中で魔力が尽きて防戦一方になっているところを我々が助けたんだよ」
この調査のリーダーを務める試験官がそう説明をしてきた。
「それにしても、クラウス君の班はまったくの無傷だね?」
「ええ、まぁ。魔力剣も持ってましたし、従魔もいましたからね」
「ふむ……、その従魔、戦闘に向いていないと思っていたが、存外優秀なのだな?」
『…………♪』
胸元でパープルがもぞもぞと動いている。
テイマーは従魔を一匹まで連れてきても良いということで、試験官にはパープルを連れていることを告げている。
レアなモンスターということで、人目に触れるように使役してはいないが、パープルはかなり優秀で、人知れぬ間にこの調査を手伝ってくれているのだ。
「ええ、とても頼りになる家族です」
パープルを褒められて、俺は誇らしい気持ちになる。
「君は、本当に従魔のことを大切にしているのだな」
試験官が驚いた表情を浮かべている。俺はどういう意味なのか首を傾げると……。
「いや、すまないな。私も仕事柄、多くのテイマーを見るのだが、大半のテイマーはある程度信頼関係こそあれど、モンスターにそこまで親密な感情を持っていない」
それは、テイマーを目指す人物が、最初から戦力としてモンスターを手懐けているからだろう。
「以前、ボイル伯爵家のテイマーとも話したことがあるが、彼女たちもモンスターに対して親愛の情を持っていた。おそらく、そう言った部分がモンスターに好かれるのかもしれないな」