When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (40)
第40話 エルダーリッチの粉
「どうにか、生き残ることができたな」
俺とパープルが皆の元に戻り、エルダーリッチを討伐したことを告げると、その場の皆が安心してホッと息を吐いた。
エルダーリッチという、大規模討伐対象モンスターと遭遇しておきながら死者がゼロというのは奇跡に近い。
生き残ることができたことを涙を浮かべ抱き合って喜ぶ者の姿も見えた。
「それにしても……何の前触れもなく強力なモンスターが出現するとは、どういうことなんだろうな?」
拠点にいた試験官とアカデミー代表の教師も来ており、撤収作業をしている。
完全にイレギュラーな事態に対し、急ぎ答えを出そうとしているようだ。
(そういえば……女神ミューズも言っていたか?)
最近【魔境】でモンスターが活性化している、と。
もしかすると、これはその影響ではないだろうか?
人が寄り付かない魔境は世界中のいたるところに存在している。
女神ミューズの言葉として受け入れてもらえるかはわからないが、異変を国が放置するとは思えない。
今回の件もあるし、国の上層部に伝わるように忠告しておくべきだろう。
俺が難しい顔をしてそう考えていると……。
「それにしても、エルダーリッチを単独討伐とはおそれいる。生徒や他の受験生を護ったことも考慮するとそうとうな高評価だぞ」
試験官さんが俺に向かって右手を差し出し握手を求めてきた。
「いえ、今回の救出については俺だけの手柄ではないです。救出に向かう判断はブレイズさんとしましたし、メリッサさんからも仲間を助けて欲しいと頼まれました。ロレインさんの知識がなければレインボーバタフライの鱗粉を使った作戦も思いつきませんでしたよ」
全員が一丸となって最善の行動をとった結果が今回の死亡ゼロという奇跡を実現させた。
「そうだな、エルダーリッチがいるのにもかかわらず、皆を救うために行動した勇気。俺はお前たちを尊敬するぞ」
試験官さんと教師さんが俺たちに視線を向ける。
周囲にいた他の者たちも、暖かい視線を俺たちに送っていた。
「べ、別に、そんなの当然だし!」
メリッサは顔を赤らめるとそう言う。称賛を受けるのが恥ずかしいのか素直に答えることができないのか、プイと顔を背けてしまう。どうやら、思っていた以上に照れ屋らしい。
「あれ、皆様どうされたのでしょうか?」
そのタイミングでロレインが戻ってきた。
「ロレインさん。エルダーリッチを倒したとはいえ、他のモンスターもいないとは限らないんですよ。あまり離れて行動を取るのは危険です」
姿が見えないと思ったら、離れた場所にいたようだ。
彼女に万が一があっては困ると思い、忠告をする。
「申し訳ありません、クラウス様。ですが、どうしてもあれ(・・)を回収しておかなければならなかったので」
ロレインは頭を下げながらも、単独行動をした理由を告げた。
「あれって?」
俺が首を傾げていると、ロレインは皮袋を俺に差し出してきた。
受け取ってみると、けっこう中身が詰まっていて、見た目よりも重かった。
彼女と目が合うと頷いてみせる。俺が皮袋を開けると、黒く光る粉がぎっしりと入っていた。
「レアアイテムであるレインボーバタフライの鱗粉、そして同じくレアモンスターA+ランクのエルダーリッチ。その魔力を吸ったこの粉は、最上級の闇属性を持つレアアイテムとなっています」
ロレインが回収してきたのはエルダーリッチの魔力を吸いこんだ鱗粉だった。
確かに、レインボーバタフライもエルダーリッチも滅多に遭遇できないモンスターだ。
しかも、この二種類は生息圏も違うので顔を合わせることがない。
そんな二種類のモンスターから生み出されたこの粉は狙って手に入れることができない一品物ということになる。
「元々の鱗粉の所有権はクラウス様にあり、エルダーリッチを討伐されたのもクラウス様です。なので、こちらの所有権も当然クラウス様になりますね。差し出がましいのですが私が回収してきましたわ」
ロレインはそう言うと微笑んだ。
「これは思わぬ副産物ですね。このことを知ったら、錬金術師ギルドも魔導師ギルドも鍛冶師ギルドも商人も、売ってくれと殺到してくると思いますよ」
教師さんが眼鏡をクイとあげ、俺の手許にある黒い粉を凝視する。
「後はどうするかはクラウス様次第ですが、もし手を持て余すようであればお声掛けください。私の方で御父様に話は通しますわ」
ロレインも積極的に商談を持ち掛けてきた。
「ちなみに、これの利用方法は?」
鱗粉やエルダーリッチに対しても知識の豊富さを発揮したロレインだ、これが買われた場合どのような用途につかわれるのか聞いてみることにした。
「ポーションを作る魔導装置に組み込めば、闇属性に耐性のあるポーションを作ることもできますし、武器や防具に闇属性を付与することもできます。これらは他の触媒を用いてもできなくはないのですが、エルダーリッチクラスともなればそうとう強力になるかと」
ロレインは口元に手を当てると、つらつらと言葉を並べて行く。
「ちょっと、詳しい話聞かせてくれる?」
その後も、俺はロレインから鱗粉や属性耐性について色々質問するのだった。