When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (44)
第44話 同行相手の名は――
「しかし、同行相手は誰になるんだろうか?」
ギルドを出て歩きながら、俺は最終試験のことについて考えていた。
一つ前の護衛試験では、アカデミーの生徒が対抗してくるという予測をセリアから聞いていたので、なんとか合格できたが、まったくヒントがないとなると話は別だ。
俺はこの試験の間、そうとう運に恵まれてきたのだ。
フェニやパープルの活躍に、セリアの伝手で警備依頼を受け、マルグリッドさんとも繋がることもできた。
結果、最終試験まで漕ぎつけたのだが、最終試験は従魔を連れて行くことができない。
これは、国家冒険者が受ける護衛依頼の中にはモンスターに拒絶反応を示す貴族や商人もいるからだ。
本番を想定してか、最終試験は個人の資質を見るため、従魔なしで挑まなければならない。
これまでも、何名ものテイマーが国家冒険者試験に挑んでいるが例外はなく、従魔に依存して試験を抜けてきたものはここでつまづく事が多いのだという。
例えここで落ちたとしても猶予はあるのだが、元々国家冒険者というのは狭き門なのだ。
次回もとんとん拍子に試験に合格できるかはわからない。
ましてや、現役の国家冒険者と足並みを揃えなければならないとなると、足を引っ張る可能性が高く、俺が焦りを覚えていると……。
「クラウスだ」
小さな声でポソリと名前を呼ばれた。振り向いてみると、
「キャロル?」
視線をやや下に向けると、ふさふさとしたケモミミが視界に飛び込んで来た。
俺が王都に来て迷っていた際、冒険者ギルドまで案内してくれた少女、キャロルが立っていた。
「クラウスは暇している?」
「まあ、今は依頼を受けてはいないけど……」
普通の人間が働いている時間にこうして歩いているのを見て、キャロルはそう判断したようで、首を傾げている。
「なら、奢って!」
そう言って指差した先には屋台があり美味しそうな串焼きが炙られている。
「別に構わないが……」
出会ったころから、キャロルにはどうにも逆らい辛い雰囲気がある。手間のかかる妹のようで、ついついワガママを許してしまうような……。
天真爛漫な振る舞いをしても許される、愛らしさのようなものがあるのだろうか?
「じゃああっちいこう」
彼女は感情を表に出すことなく、俺の手を握り屋台へと連れて行こうとする。
ケモミミがフリフリと動き、尻尾がパタパタと揺れているので、喜んでいるのはわかった。
「おじさん、串焼きちょうだい」
「はいよ、銅貨4枚だ」
「銅貨4枚だって」
キャロルに促され、俺は金を支払った。
俺はふとあることに気付く。
「そういえば、キャロルは国家冒険者だろ?」
串焼きが出来上がるのをじっとみていたキャロルは一瞬俺の方を見ると首を傾げる。
「身分証を見せれば割引が受けられたんじゃないのか?」
国家冒険者には様々な特権が与えられている。王都で買い物をする際、割引が受けられると聞いていた。
「この店は、少ない利益で沢山売ることにしている。そういう店にはお金を落とさなきゃだめ」
キャロルは淡々と理由を告げてきた。
確かに、冒険者も国家冒険者も稼げる職業なので、こういう一般人の店でまで身分証を利用するのは良くない。キャロルはそれを俺に教えてくれたようだ。
「はいよ、串焼き二つね」
屋台のおじさんが店からでて回り込み、キャロルに串焼きを手渡す。
その瞬間、
――ガチャン――
遊んでいる子どもたちが蹴ったボールが屋台の、串焼きが積んであったトレイにぶつかった。
「うわっ!」
誰かの声が聞こえる、中空には数十本の串焼きが飛び上がりこのままでは落下してしまう。
「させない!」
次の瞬間、視界の端でキャロルが動いた。
彼女は目で追うのがやっとの動きで串焼きに近付くと、落ちてくる串焼きをすべて回収しトレイに乗せたのだ。
「す、すまねえ、お嬢ちゃん!」
「ご、ごめんなさい、おじさん」
屋台のおじさんと、子どもが謝っているのだが、これまで散々戦闘を繰り返してきた俺にはそのことよりもキャロルの異常な身体能力の方が気になった。
「お礼、この串焼きもう二本でいい」
「そのくらい構わねえよ、せっかく焼いたのが全部台なしになるところだったんだからな」
屋台のおじさんとそんな会話をして、キャロルが俺の下に戻ってくる。
「串焼き、もうけた」
先程の神速の動きなどまるで大した動きでもないとばかりに、キャロルは戦利品の串焼きを見せびらかしてくる。
彼女は串焼きを食べ終えると、指をペロペロと舐めていた。
「俺はそろそろ帰ってもいいかな?」
キャロルの姿を見て、少しは落ち着いたがやはり早く戻って最終試験について考えたいと思っている。
「うん、バイバイ」
特に引き止める気はないのか、キャロルは俺をあっさりと解放してくれた。
「あっ、そうだ。クラウス」
背を向けたところで、彼女が話し掛けてきた。
「何?」
俺が振り向くと、キャロルはいつも通りの表情を浮かべ俺を見る。
「最終試験の相手はウチだからよろしく」
そう言ってその場から立ち去って行くのだった。