When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (60)
第60話 妹がいる朝食
「兄さん、朝食ができましたよ」
肩が揺すられ俺は目を覚ます。
「ん……もうそんな時間か?」
目の前には制服の上からエプロンを身に着けたセリアの姿があった。
先日から彼女が屋敷に引っ越してきたのだと寝ぼけた頭で思い出す。
「すぐに食堂に行くよ」
「はい、お待ちしておりますね」
着替えてから向かうことを伝えると、セリアは眩しい笑顔を向けてきた。
(そういえば、学校までの距離が遠くなったから早起きなのか)
普段よりも早い起床時間、その理由に気付いた。
着替えを終えて食堂に向かうと、テーブルに二人分の朝食が用意されていた。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
二人で食事を摂っていると、日常なのに少し違和感があるというか……それでいて妙にしっくりくるような感覚を覚えて不思議な気分だ。
実家に住んでいたころは隣り合って座っていたセリアが正面にいるからか? それとも、しばらく離れて暮らしていたので、久しぶりに彼女がいる朝食に実感がわかないのだろうか?
「うん、美味しいな」
用意されているのは野菜を煮込んで味付けしたスープと焼きたてのパン、そしてサラダ。
どれも実家に住んでいたころに毎日食べていたのだが、慣れた味と言うのは安心できる。
「良かったです。お母さんからレシピを教えてもらったんです」
両親が屋敷に滞在中、セリアはよく母親と話をしていたが、その時に料理について教わっていたらしい。
「お母さんがいない間は、私が兄さんの健康を管理するように言われてますからね。これからは毎日料理します」
「あまり無理はするなよ?」
あくまで、俺はセリアを家政婦として家に住まわせているわけではない。学業のために王都に留学してきているのだから勉強が優先。成績が落ちるようなことがあってはならない。
そのことについては一緒に住む前に口を酸っぱくして話してある。
「これは私の趣味みたいなところもありますので平気です」
「うん? お前、料理そこまで好きだったけ?」
実家にいたころ、よく母親の手伝いをしている姿は見たが、そこまで熱心に料理をしていただろうか?
「違います。私の趣味は兄さんのお世話をすることです」
「ああ……」
それならば納得がいく。確かにセリアはことあるごとに俺の世話をやきたがった。
部屋の掃除やら、着る服を選んだり。
妙に甲斐甲斐しいとは思っていたのだが、趣味だと言われると納得できてしまう。
「さて、それでは私は学校に行ってきますね」
食事を終え、洗い物まできっちり片付けたセリアはエプロンを外すと学校に向かう。
「それなら、俺も一緒に出るよ」
「はい、わかりました」
今日はテイマーギルドに用事があるので、セリアと一緒に出掛けるのも丁度良い。
俺は準備をすると、彼女と一緒に屋敷を出るのだった。
「すみません、今月の納品分を持ってきました」
セリアが学校に向かう馬車に乗るのを見送ってから、俺はテイマーギルドへと来た。
「ありがとうございます。そろそろ在庫が切れそうだったので助かります」
用事とは、家に溜めてあったフェニックスの羽根やレインボーバタフライの鱗粉を納品することだ。
俺が袋に入ったままアイテムを渡すと、彼女はフェニックスの羽根をトレイに並べ、レインボーバタフライの鱗粉を測りにかけて重さを調べる。
「こうしてみると、やっぱり綺麗ですよね」
日頃から見慣れているアイテムなのだが、丁重に扱われているのを見ると高級感が漂っている。
「そうですね、どちらも触媒として重宝されていますが、一部の方は装飾などにも利用しているらしいですよ」
フェニの羽根を頭に飾り付けていたりするのだろうか?
今後、国家冒険者として貴族など大物のパーティーの護衛依頼が入ることもあるのだが、もし身に着けている姿を発見したら吹き出してしまうかもしれない。
しばらく待っていると、計算が終わり金額が提示される。
「支払いは、7割を屋敷購入の返済に回すということでよろしいですか?」
「ええ、大丈夫です。お願いします」
係員さんの確認に俺は頷いた。
「現在のクラウスさんが借りている金額がこちらで、今回の分を差し引くとこの金額になります」
目の前の帳簿には目がくらむような金額が表示されているのだが、一度に返済する金額もまた目がくらむ金額だったりする。
俺が頷くと、彼女は記帳をし、残りの金額を現金で持ってきた。
3割とはいえ、こちらもかなりの金額になる。
それだけフェニやパープルが生み出すレアアイテムは希少で高額ということだ。
「そういえばクラウスさん。屋敷の方はどうですか?」
清算が終わると、係員さんは世間話をするように屋敷について聞いてきた。
「サギンさんの話だと、庭が随分と荒れ果てていて屋敷も古びているとか。手入れに苦労してるんじゃないですか?」
「実のところその通りなんですよ。屋敷はフェニの浄化の炎で綺麗にしたんですけど、庭はあまり手付かずです」
雑草を刈り取るまでは時間がある時に進めたのだが、屋敷の庭の手入れなど、俺やセリアには知識がないのでどうしようもない。
「業者を入れたりしないんですか?」
「フェニやパープルやロックの件もありますからね」
俺は溜息を吐くと現状が難しいことを告げた。
希少なモンスターを従魔にしているので、外部の人間を屋敷にいれてもよいものか悩んでいるのだ。
「でしたら、うちの関係者なら良いのではないでしょうか?」
関係者というと真っ先に思い浮かぶのは職員さんたちだ。
パープルが進化する前に何日も徹夜で調べ物を手伝ってくれたので人柄は間違いない。
「フェニちゃんやパープルちゃんのことも知ってますし、クラウスさんが懸念しているような問題は解消できるかと」
「でも、大丈夫なんですか?」
あの時も散々無理を強いてしまったが、彼らには通常業務もあるのではないか?
「今はそれほど業務が詰まっているわけではないので、彼らも空いていますし、それにこうした作業に適した人材もテイマーギルドにはおりますので」
係員さんはそういうとグイグイと押してくる。
「それなら、お願いしましょうかね」
そこまで勧められると断り辛いのもあるが、早く庭を整備して通常の冒険者活動に専念したい気持ちもあった。
「それでは、こちらの方でギルド内で声を掛けて伺うようにしますね」
俺は仕事にかかる費用を彼女に預けると、テイマーギルドをあとにするのだった。