Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (271)
267話 巨大倉庫
《クオイツ竜葬山地》で狩り始めてから3日目の夜。
上空から日に日に何かが変わっていく姿を眺めながら、今後の拠点について思案する。
上台地は相変わらず神様達が自由になんかやっており、今のところ川沿いに作りかけの家が10軒くらいと、俺が用意した石作りの倉庫。
その裏手には木材と石材が山のように積まれている。
見るたびに家が消えたり増えたりしているので、やっと1軒完成した家を基に、アリシアが先生をしながらそれぞれ家を作り始めているのだろう。
いつ見ても光源用魔道具の光が消えることはないし、そもそもあの人達って寝ないので、夜間になんだかんだと皆が使う機会のなかったスキルを試しながら色々と学んでいる最中なんだと思う。
難点は作りかけの何かが多いことだが、まぁ荒っぽいことをやらなきゃなんでもいい。
掘り起こされたまま放置された広大な農地だけはちょっと可哀そうなので、極力早めに初級ダンジョン行って種をゲットしてこないとだな。
そして下台地はというと、コチラはコツコツと堅実に生活拠点が広がっていた。
たぶん直径4㎞~5㎞くらいはありそうな円形型の湖。
その西側に面する畔には、ゼオとカルラの二人用と俺用とで分かれた2軒の小さな家が建ち、裏手の一角には山となった大量の魔物素材と、あとは森の中でカルラが拾ってきた野豚がフラフラしていた。
ゼオが【調教】したらしく、柵が無くても問題ないらしい。
周囲はカルラが順調に安全圏を広げており、切り株だらけではあるものの既に崖までの伐採は終わり、家の周囲も1㎞以上は見晴らしが良くなっていた。
その少し手前には石で作った血の池プールと魔物の解体場、それに言われるがまま【土魔法】で作った皮を干すための簡易倉庫があるので、実際はもう少し伐採していかないといけないだろうが……
それでもここまでくれば、まず魔物が家の方まで寄ってくることもなさそうである。
それぞれの家の間には、こちらも俺が一番初めに作った雨に濡れなきゃいい程度の共用物置が。
あとは風呂やら机やら焚火スペースやらの共用スペースが2軒の家と湖の間にあり、ゼオは現在湖に桟橋を製作中だ。
崖の内部に二つの大きな穴を空けて、その中に冷蔵の食糧庫と野盗から回収した荷物を置いているので、思いのほか外に存在する建物は少ない。
ちなみに上台地のマイホームは遠慮している。
当初はゼオに何かあったらまずいので、安全が確保できるまでは俺も下台地で寝泊まりするという話だったが、よくよく考えると俺が上台地に家を建てるとか場違い感ハンパないからね。
所詮はただの平民なので、上台地はあくまで神様用。
基本過ごすのは下台地にしておきつつ、俺はちょくちょく上台地へ遊びに行くというルールを無理やり作ったのだ。
フェリンとリステが文句言ってたけど、そもそも二人とも自分の家すら作れていないわけで。
それに俺専用『秘密基地計画』を伝えたら二人とも黙ったから、これでひとまずは問題解決だろう。
なので今直面しているのは、ロッジさんの家をどうするかだ。
「ゼオ~、俺用に作ってくれた家、昨日話したロッジっていうドワーフおじさんに譲ってもいい?」
「それは構わないが、ロキの寝床はどうするのだ? さすがに1日2日で家はできぬぞ?」
「俺は崖に穴掘っても余裕で寝られるから気にしなくていいよ。それに今は魔物討伐と宝探しでかなり忙しいから、落ち着くまで町の宿に泊まっちゃってもいいし」
「え~お肉も血もすんごい美味しいから、できれば竜は持って帰ってきてほしいんだけどなー!」
「いやいや、ビビるくらい肉が美味いのは認めるけど、上にお裾分けしたって山ほど余ってるじゃん。それにどうせそのうち買取の値段下げられるか買取拒否されるだろうから、そうなればここに持って帰ってくることになると思うよ? ロッジさんも素材欲しがってたしね」
「ふむ……人の世は面倒なものだな」
「ね~それに比べてここって、面倒なことなーんにも無いよね」
「実際に何も無いからな」
その言葉を聞いて、思わず苦笑いしてしまう。
生活力があり過ぎる二人だからであって、普通なら何も無さすぎるこの環境に、1週間もすれば帰りたいと音を上げるんじゃないだろうか?
実際ゼオとカルラなら、『血』という限定的な条件さえ無ければ俺がいなくてもこの地で間違いなく生活していける。
おまけにゼオは丸太を持つのが少し楽になってきたと言っていたので、ちょっとずつでも力が戻れば猶更だろう。
果たして普通の人に近いロッジさんが、この環境に耐えられるか分からないが……
(まぁそれでも、あって困ることはないか)
そう思った俺は家の裏手に広がる空き地を歩きながら、『無理やり、耕せ』『無理やり、耕せ』と連呼し、足から魔法を放って土をモコモコさせる。
やっぱり広範囲はできないけど、それでも地面に広がる木の根が捻じれて切断されていくので、邪魔な切り株は家の方にどんどん放り投げておいた。
これも燃料になるし、ゼオが何かに使うかもしれないからね。
そして体育館くらいのスペースを確保したら実験開始だ。
【土魔法】レベル6でできる最大の『石の壁』はどのくらいなのか。
30cmほどの厚みを意識しながら魔法を唱える。
『大きく、平らな、石の床を、生成』
ズズズズズズ――……
するとみるみる出来上がる石の地面。
繋ぎ目のない一枚板のような綺麗な状態に感動するも、お、おお、うぉおおお???
想像以上に広がっていくんだが!?
これは――……知力がちょっと仕事し過ぎじゃないだろうか。
「ひゃ~凄いね!」
「うむ、やるなロキ」
いやいや、二人ともそんな普通に褒めないでよ。
出来上がったのは体育館を通り越して校庭くらいありそうな大きさで、自分なりに整地した枠を大きくはみ出してしまっていた。
魔宝石を取り出し転がせば、コロコロとゆっくり転がっていくので、これは良い意味での失敗である。
その後は消して、整地して、作り直して、コロコロして。
水平器みたいなやつなら自分でなんとか作れないかなーと思案しながら、6面を石の壁で覆っただけのバカデカい倉庫が完成する。
魔法の影響なのか、過去の風呂の時もそうだが成型に歪みがないので、ピタリとくっつければ隙間もまったく感じられない。
四方の壁は厚みを増しつつ地中にかなり埋めたので、天井の高さだけちょっとガバガバだけど……
その状態で蓋をすれば自然と通気口みたいになったので、これはこれでありなんじゃないかなと思っている。
推定400メートル×200メートル×100メートルくらいのこの広いスペースなら、そのままロッジさんの仕事場としても活用できるだろう。
「薪棚をどうするか悩んでいたが、これほどの広さなら中に作っても良さそうだな」
「んだね~これじゃ高さがあり過ぎるくらいだし、追々は倉庫内に階層作ってもいいかもしれないね」
それはこれからの頑張り次第。
狩りと悪党討伐で物が増えた時にまた考えるとしよう。
「んじゃ、早ければ明日にでもドワーフのおじさんが引っ越してくるから、二人ともよろしくね」