Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (305)
300話 お土産
時刻は20時過ぎ。
「やほー!」
「やっほー!」
「こんばんは」
「ぬお、ロキも食べるか?」
ちょっと遅くなってしまったが、だからこそ上台地は一仕事終えた女神様達が降りており、家の周りだけでもアリシアとリル、それにフェリンの3人がいた。
なんかよく分からない肉の塊を食べているけど、だいぶ黒焦げなので華麗にスルーしつつ本題を切り出す。
「なんとー、今日はー!」
「「「なんとー??」」」
「ダンジョン行ってきました! ってことで、ほんとお待たせ! 種いっぱい持ってきたよ」
「おぉ~! ありがとー! ほんと凄いいっぱいだね!」
そうでしょうそうでしょう。
何匹倒したか分からないけど、律儀に全部ドロップした種やら木の実を拾ってきたからね。
中サイズ革袋が結構パンパンになるくらい詰めてきたので、それらを生成した大きめの石机にドバーッと広げていく。
「色々な種類が混ざっているのだな?」
「そうなんだよね。たぶん相当な種類の種が落ちてるから、そのまま持って帰るとどうしてもこうなっちゃうのが難点かな」
「分別するなら手伝いますよ?」
「私も作った物を食べたいからな。協力しよう」
「ん~……」
一人、机の上に広げられた大量の種を見て悩むフェリン。
分別が面倒なら一度売って、どこかにありそうな種の販売所に行くことも考えるが……
「これさ、【空間魔法】で一回収納して、限定的に出していけば分別されない?」
「ほほぉ」
「なるほど」
「フェリン、どうしたんですか?」
「?」
なんか最後のアリシアがちょっと意味深だけど。
たしかに種類を把握していれば、種別に引っ張り出せるかもしれない。
今日のフェリンさん、いつもよりだいぶ冴えていらっしゃる。
「【空間魔法】取ってくるからちょっと待ってて!」
そう言って暫し。
笑みを浮かべながら戻ってきたフェリンは、一度片っ端から種を収納したのち、次々と言葉を発していった。
「キュウリの種!」
「キャベツの種!」
「ポポロイの種!」
「トウモロコシの種!」
「コブクロの種!」
(ポポロイってなんだ……コブクロってなんだ……)
ちょくちょくよく分からない名称が出てくるけれども。
それでも次々とフェリンの手から少量の種が出てくるので、俺はひたすら石のお皿を生み出し分別を進めていく。
が、ここでそういえばと、一つの存在を思い出した。
「フェリン、ちょっと」
「え?」
何よりも大事な、コイツの存在を優先しなくてどうするのだ。
「米の種……いや違うか、種籾っていうのか? とりあえずお米の分別をしてもらえない?」
「ロキが欲しがってたやつか」
「オッケ~! 米の種!」
パラパラパラ……
すると、出てきたのは5粒ほど。
それでも確かに形状は見覚えのあるお米の形で……
「おっほぉおおおおお!! やっと『米』キタぁあああああああああん!!」
「そ、そんなに凄い食べ物なんですか?」
「分からん……が、このロキの顔を見るに、相当期待できるかもしれん」
「なんか責任重大なんだけど!?」
フェリンは余計な心配をしているが、ダンジョンで出たということはどこかで買えるということだ。
ならばさほど心配はしていない。
あとは育てる環境なんかも当然あるだろうけど、上手くいけばフェリンが想像を絶するほど美味なお米を作ってくれるかも……
そんな期待に胸と鼻の穴を膨らませているだけである。
神様知識フル稼働でやり始めた種の分別は3人に任せ、俺はもう一つの用事を。
フィーリルの所在を聞けば奥の森を散歩中とのことなので、【飛行】しながら探索すれば、両手を広げながら川の岸で佇む姿を発見した。
毎度の白いワンピースで真っ暗闇の森の中にポツンと立っているわけでして、誰がどう見ても深呼吸している幽霊にしか見えない。
「あのー、そこにいるのはフィーリルさんですかー……?」
「あら~ロキ君、どうしたんですか~?」
「渡したいモノがあって探してたんだよ。こんなところで何してたの?」
「森とお話ししてたんですよ~」
「……?」
どうしよう、なんかフィーリルが精霊っぽいこと言い始めてる。
今までワールドクラスのニートだったのにいきなり仕事し始めたから、ストレスでおかしくなってるのかもしれない。
「フィーリル。疲れてる時は、これで癒されてね?」
そう言いながら差し出したのは、1匹の小さい亀。
一番生存を心配してたけど、適度に水を掛けてたら意外と元気にモジモジしていた。
今は運ぶために【調教】で大人しくさせてるけどね。
「あら~!」
「今日ダンジョン行ってきたから、とりあえず生き物は全部フィーリルに任せようと思って」
そのまま、他の2種。
ウサギとヒヨコもフィーリルに手渡せば、やっぱり珍しくない生き物でも嬉しいんだろうな。
顔がニヨニヨしながら優しく抱きかかえている。
「ありがとうございます~大事に育ててみますね~!」
「初級ダンジョンも一回踏破するまでは通う予定だから、もっと色々な種類の生き物を得られると思うんだ。だからこれ以上厳しいってなったら言ってね? 向こうで買取もやってたからさ」
「大丈夫ですよ~! これだけ広いですし、色々な生き物を育ててみたいですからね~!」
ん~そう言うなら、気にせず連れてきちゃってもいいのかな?
外来種とかの問題がちょっと怖いけど、神様ならそこら辺は上手いことやるんだろう。
これでフェリンの種と、フィーリルの生き物を育てたいという問題はある程度クリア。
あとはリルが鉱物欲しがってたっぽいけど、そっちはいつでもロッジのところに行けば渡せるし――
うん、とりあえずはこんなもんで大丈夫だな。
となれば、忘れる前に早く整理しないと!
俺は今日鑑定屋のおじさんから聞いた情報を纏めるべく、すぐに秘密基地へと飛んだ。