Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (36)
36話 レベル4
7/17 本日6話目の投稿です
俺は1体のポイズンマウスに狙いを定めていた。
(うーむ……群れている感じはしないけど、30メートルくらいの距離にいるもう1匹とあまり離れてくれないか。もう1匹が寄ってくるかどうか……)
ジリジリと摺り足で近づいていくと、ポイズンマウスも俺を意識したようで、ピクッと反応してからは俺に視線を向け続けている。
ソッと少し離れたもう1匹のポイズンマウスに視線を向ければ、そちらはまだ俺を敵と判断していないのか、草に顔を突っ込んでいるのでお食事中の模様だ。
俺が見えているということはまずポイズンマウスも見えているということ。
視界が広いと当初は喜んでいたものの、「仲間が攻撃された!」となって、視界内でモゾモゾ動く茶色い物体が一斉に集まってくるのではと内心ヒヤヒヤしていた。
(そのまま単独行動していてくれれば良いんだけど……)
そう思いながらも近づくこと10メートルほど。
きたきたっ!!
向かってきたのは1匹だけ!
しかも……おっ、おっ、遅いっ!!
ホーンラビットよりは多少速い気がするも、レベル8となった今ではもう【突進】を発動された後でも問題無く躱せるので、トスーン、トスーンと少し跳ねながら向かって来るポイズンマウスは想像以上にノロマで逆に困る。
ネズミにしては50cmくらいと無駄に大きいからか。
地球にいる小さいネズミの方が明らかに速いくらいだ。
「あ、あ、あ、あかーーーん! 先に剣が出ちゃうぅーー!!」
まるでスローボールを急に投げられたバッターのように……
予想とのギャップに俺の身体が我慢できず動いてしまいそうになったので、咄嗟に横振りから突きに変更。
剣術に覚えのある人間が見たら「なんじゃありゃ?」と呟かれるくらいに不格好な体勢のまま、剣の先を正面に向けた俺とポイズンマウスが対峙し……
ポイズンマウスは躱す動作に入るも間に合わず、そのままやや中心線を逸れた状態で頭から刺さっていった。
『【毒耐性】Lv1を取得しました』
『【毒耐性】Lv2を取得しました』
「……ふぁ?」
グダグダな体勢だったためそのまま地面にすっ転んだ俺は、それでも結局倒せてしまったこと。
それ以上にたった1匹でいきなり【毒耐性】のスキルを得られたこと。
おまけにそのままアナウンスが連続で流れ、一気にスキルレベル2になってしまったことに驚き、立ち上がることもせず固まってしまっていた。
(……なんだこれ……何が起きた?……ってマズい考えるのは後だ! もう1匹は!?)
すぐに視線を周りに向ければ、やや近い位置にいたもう1匹は変わらず草の中に顔を突っ込んだままであり、仲間の死亡に気付いている様子は無い。
ホッと一安心したのち、すぐ目の前にある死体に視線を戻す。
「素材が頭部にある毒袋なのに頭を刺しちまったか……」
解体場主任のロディさん情報からすれば、頭を傷つけるということは素材価値を無くすということ。
最悪買取不可、良くて素材価値『E』や『D』を覚悟するも、とりあえず初めてなのだから一応は持ち帰ってみようと、頭、討伐報酬の尻尾、そして魔石を取り出し回収する。
さすがにパルメラ大森林で慣れたため、ネズミ程度の解体でどうのと思うことは無い。
(とりあえず理解不能な出来事が起きたし、一度入口に戻るか……)
そそくさと魔物との距離を取った俺は、すぐさまステータス画面を開いて【毒耐性】の詳細を確認した。
【毒耐性】Lv2 毒への耐性が増加する 常時発動型 魔力消費0
詳細内容は予想していた通りか。
ただいきなりスキルレベル2と16%になっている点、これは不可解だ。
考えられるのは、ポイズンマウスが所持している【毒耐性】スキルの
レ
ベ
ル
が
高
い
。
これくらいしか考えられないし、まずこの予想で間違いないだろう。
となるとかなり熱い魔物かもしれない……
なんといってもこの【毒耐性】スキル、ボーナスステータスが防御力なのだ。
いきなり+3まで上昇しているし、1体でここまで上がるとなれば、少し粘るだけでレベル5か6くらいまで持っていける可能性もある。
そうしたら防御力は大きく底上げ。
ルルブの森にいるオークには非常に心強いステータスとなってくれることだろう。
おまけにポイズンマウスは予想以上に弱いっぽいし数も多い……
おいおい、ここはボーナスステージかよ?
とりあえずもう1体ポイズンマウスを倒して、【毒耐性】スキルの経験値がどのくらい伸びるかを確認。
そのあと乱獲しつつ、エアマンティスを探していこう。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
約3時間後、休憩を挟みつつも走り回りながらポイズンマウスを4体倒した俺は、こいつの【毒耐性】スキルがレベル4であることを確信した。
なぜか?
それはスキルレベルが3に上がってから、一体当たりの上昇値が20%になったからだ。
これで未取得状態からスキルレベル1取得する時の、パルメラ大森林と同じ上昇率に入ったことが分かる。
あくまでパルメラ大森林の魔物がスキルレベル1を所持していたらという仮定の話ではあるけれど、最低位狩場と言ってもいい場所の魔物が揃ってスキルレベル2とか3なんてことは有り得ないと思うので、まずあそこの魔物はスキルレベル1と断定しておいても問題は無いだろう。
となると、だ。
ここで普通に狩っていても、まずスキルレベル5くらいなら簡単に上がる。
スキルレベル4になってからの上昇率は一律で1体2%に切り替わったので、レベル毎の必要経験値は等倍に上がっているわけじゃなさそうだが……
それでもスキルレベル4所持の魔物となれば、1体当たりのスキル経験値量が多く設定されているようだし、何より魔物の見つけやすさ、そして数が違う。
はっきり言って楽勝だ。
となると最低でもスキルレベル6。
欲を言えばスキルレベル7くらいまで上げられるなら上げておきたいところだな。
というのも初のレベル4スキルを取得して、ボーナス能力値の上昇パターンに変化が起きた。
今まではレベル1が対応能力値+1、レベル2が対応能力値+2、レベル3が対応能力値+3と、レベルと能力値が同じ数値で上がっていたわけだが、レベル4になって対応能力値。
つまり今回の【毒耐性】で言えば防御力が+5上昇した。
となると、スキルレベルが上がれば上がるほどボーナス能力値の上昇幅が増える可能性もあるので、高レベルスキルを所持している魔物は粘った方が後々かなり楽をできると予想している。
ポイズンマウス良いねぇ……凄く良い。
毒持ちの生物が、自分の毒で死ぬなんて話はまず聞いたことが無い。
それなのに自分の体内に毒袋を持っているんだから、ある程度の毒耐性を所持しているのは当たり前なのかもしれない。
そしてこの3時間くらいでエアマンティスも2体倒したわけだが、こいつも実に大したことがなかった。
身体が緑色でがっつり草に紛れた保護色になっているため見分けはつきにくいが、【気配察知】を使用しながら視界に入るポイズンマウスを狩っていると、草むらの中で動く何かを察知することがある。
気配だけでエアマンティスかまでは分からないが、目で追うとデカいカマキリの頭がひょっこり草むらから出ているのでそちらに向かって【突進】。
そうすれば風魔法を撃たれる前に封殺できたので、まったく脅威とも思わない楽勝の敵に認定されている。
一応近づくと前足を振りかぶって対抗しようとしてくるが、剣を当てるとそのまま前足がスッパリ切れていくので迫り合うということにもなっていない。
ただただ見た目が気持ち悪い巨大昆虫というだけである。
もうちょっと、ポイズンマウスと戦っている最中に風魔法の横ヤリが入るとか、警戒していたんだけどなぁ……
所詮はFランクの魔物だからだろうか?
それともスキルレベル上げという名目で、パルメラ大森林で粘って狩りをし続けていたからだろうか?
ロッカー平原の拍子抜けする楽勝っぷりに、自分が調子に乗ってしまいそうで怖くなる。
――そして楽勝じゃーんと、Eランク狩場に挑んで殺される。
パイサーさんの息子さんが辿ってしまった道はこんな内容なのでは? と思うと考え方も慎重になってくるので、スキルレベルを目標値に上げるまでは次の狩場に行かないというマイルールを作ってしっかり守っていこうと思う。
自身のなんとなくの強さや魔物との感触より、スキルレベル基準で狩場を移動していった方が効率的、かつ安全に成長していけるはずだ。
【風魔法】は最低スキルレベル3まで。
【毒耐性】は最低スキルレベル6まで。
まずはこのあたりまで粘ってからどうするかを考える。
そう決めながら、俺は先ほどから手にしたまま口に運ぶことを躊躇っていた携帯食、俺が勝手に命名した『馬糞モドキ』を口にするのだった。
作者の創作意欲に直結しますので、ぜひ続きが気になる。
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