Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (42)
42話 定点乱獲狩りの成果
7/18 本日5話目の投稿です
1回目の定点乱獲狩りが終わり、石柱まで戻ってみれば、既に彼らの姿は見当たらなかった。
穴を掘った形跡は無く、生成した石柱に土の付いた足跡が複数残っていたので、蹴っても倒れないと思って諦めたのだろう。
見晴らしが良い分、どこかに隠れているという心配が無いからとりあえずは一安心だ。
時刻は丁度昼時。
石柱にもたれ掛かり、腰に吊るした小型の革袋からサンドイッチを取り出して頬張りながら考える。
(魔力消費48でこの石柱ができたのはいいけど、問題は籠を取ることだよなぁ……)
当然ながらアデント達が力業でも無理だった石柱の籠を、俺が力だけでどうこうできるわけが無い。
だから籠を取るという作業も新しい試み、一つの実験を成功させなくてはならない。
30分ほど食事を取りながら休息をし、目の前の石柱を見つめる。
(緊張してくるぜ……)
ここからは少々身体を張る作業だ。
自然と強張ってくるが、それでもここをクリアしないと今後の安定した定点狩りができないので気合を入れるしかない。
一度ステータス画面を確認した後、ソッと目の前の石柱に片手を付き、自分の足元を見つめながら呟く。
「長さ5メートルの石柱を生成」
ズズズズズズズッ……
「ふぉおおおおおお!!!」
自分の足元からズンズンと迫り上がってくる石柱。
俺の視界がどんどん地面から遠ざかり、籠の乗った石柱に触れている手にも力が入る。
そして少し手を伸ばせば籠に手が届くという良い感じの高さで、俺を運んだまま伸び続けていた石柱の動きは止まった。
(こ、怖かった……でも実験は成功だ!)
今回はあくまで定点乱獲狩りの1便なので、籠を持って下りるということはまだしない。
背負っていた革袋の中身を籠に移し、水分補給をしたら、子供の頃に遊んだ登り棒の要領で直径30cmほどの石柱に抱きつきながら滑り降りる。
さて、問題はこのやり方が継続できるか。
すぐさま今回の石柱で消費した魔力を確認すると、5メートルの石柱を生み出すのに魔力が『26』消費されていた。
うーん、籠に触れるだけでこの魔力消費となれば、当然重い。
重いが、まだこのくらいで済むなら調整も利くし、この手の最高率調整なんぞゲームでどれほどやってきたか分からない。
「まずは『26』の回復時間を計測しつつ、遠征の移動範囲で調整していくか……」
そのように決め、魔力と体力が枯渇しない範囲で本気の定点狩りに勤しんだ。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
(調子に乗り過ぎた……しんどい……)
それでもジョギングを止めなかった俺も大概だが、今日はロッカー平原で初めての籠が満杯状態だ。
というより多少溢れて道中で落としそうだったので、革袋の中にも素材を入れている。
丸薬は飲んで4日目。
体力が低下している時だったので余計に帰りがキツかったものの、定点狩りが軌道に乗った喜びには勝てなかった。
あの最高効率を叩き出している感じはどうにも止められない。
止めることが勿体ないと感じてしまい、もっともっととなってしまう。
ここがゲームの世界なら別アカウントを操作して、食事の運搬、素材の現金化を行いながら、俺はろくに町にも帰らずロッカー平原に居座り続けたことだろう。
(うーん、この発想も有りと言えば有りか? しかし、よほど信用できる荷運びに依頼をしないと成立しない……おまけにロッカー平原を平然と通り抜けられる人間となるとやっぱり厳しいか……)
これができれば最高なんだけどなぁ……
そんな妄想を繰り広げていたら、いつのまにか解体場の前で棒立ちをしていた。
「おい。おーい。おまえ大丈夫か?」
「ふぇ!? あぁまたやってしまいました大丈夫です……頭の中が妄想でいっぱいになってました……」
「そりゃ1日でそんだけ狩ってこられりゃ、金の使い道にも悩むってもんだろうな……」
そう言って俺の籠の中身を見たロディさんの顔は明らかに引き攣っていた。
そうでしょうそうでしょう。
自分でも気づいた時には溢れかえっていてビックリしましたから。
途中から素材のことより、スキル経験値のことしか頭にありませんでしたけどね。
「ハハハ……それじゃこれお願いします。あ、あとこっちも」
「こっちが終わったら見てやるから、素材はカウンターに置いてちょっと待ってろ」
籠と一緒に大型の革袋も渡すとロディさんは頭を抱えていたけど、これがロディさんの収入にも繋がるんだと思えば罪悪感などまったく無い。
「今日は何時に帰れるかわからねーなこりゃ……」
「まぁまぁいいじゃないですか。ロディさんもその分収入増えるんですよね?」
「そりゃそうだが……限度ってもんがなぁ。知っているか? お前のせいで町長とギルマスが、ポイズンマウス増えているんじゃないかって騒いでたぞ? 予防策を張るって緊急依頼まで出す始末だ」
「今日の朝見ましたよ。報酬がちょっと上がってましたね」
「他のハンター共に聞いたら普段と変わらねーって言うし……ロキが大量に狩ってくるせいで勘違いしてやがるなこりゃ」
「でもそれって僕のせいではないですよね? ポイズンマウスが増えて大変です! なんて言ってないですし」
「もちろんお前のせいじゃない。せいじゃないが……切っ掛けであることは間違い無いだろうよ」
口は動かしながらも別パーティの素材確認を終えたらしいロディさんは、木板にサラサラと文字を書き、そのパーティに確認しろと渡していた。
「ポイズンマウスの素材ランクCが『3』、Bが『4』、Aが『8』、あとは討伐部位と魔石がそれぞれ15に、エアマンティスの討伐部位、魔石がそれぞれが5だ。間違いないか?」
「あ、あぁ大丈夫だ……」
そう言った30歳くらいの無精髭を生やしたハンターは、横に置かれた俺の素材を見ながら答えていた。
というか素材に答えていた。
(確かポイズンマウスが素材ランクもまともなら1匹6000ビーケくらいで、エアマンティスが1匹10000ビーケくらいだから……このパーティは何人か分からないけど、14万弱くらいがトータル報酬か)
仮に4人だとして、それでも一人当たり35000ビーケくらい。
アデントパーティの報酬もそうだが、ジンク君達の報酬を思い返してみるほど、ロッカー平原が割の良い狩場であることがよく分かる。
(ジンク君達も行ってみたらいいのになぁ……)
そんなことを考えていたら俺の素材判定が終わったようだ。
「はぁ……よくもまぁ連日狩り続けて、しかもどんどん素材量を増やしてこられるな。素材ランクは全て「A」でポイズンマウスが全部で53体、エアマンティスが全部で12体だ」
そう言って木板を渡してくるも、自分で何体狩ったか覚えていないので確認する意味があまり無い。
「大丈夫です。預けでお願いします」
「了解だ」
「あ、ちなみにロディさん。これ以上に大きい籠ってないですよね?」
「この町だと1つしかないな。おまけに1人が貸し切り状態で常に使っているから、あるか無いかで言えば無い」
「そうですかぁ……ということは必要なら特注で作る方が良さそうですね」
「まぁそうだが……これ以上素材量を増やすつもりか? お前の図体を考えたらかなり無理があるだろう?」
「そこなんですよね~狩りが終わった後にこれ担いで走るのはかなりしんどかったです」
「は?……走る? 歩くじゃなくて走るだと!?」
「走るって言ってもジョギング程度ですよ。体力を増やしたくて」
「おまえがふざけた素材量を持って帰ってくる理由もよく分かるな……おいワルダン! やっかむ暇があったらロキみたいに努力しろよ! だからこその成果ってことだ!」
「……そ、そうだな。あれ担いで帰り道を走るなんて、俺達には到底無理だ」
なんだかよく分からない流れだったが、若干アデントパーティのような視線を俺に向けていたワルダンさんという人の表情が、諦めにも似た苦笑いに変わったのでとりあえずは良かった。
あんなのが複数パーティ出てきたらもう手に負えない。
(そして今日の出来事も報告しないとなぁ……)
そう思いながら受付方面へ向かうと、今一番遭遇したくない人達。
アデントパーティの面々が勢揃いで待ち構えていた。
作者の創作意欲に直結しますので、ぜひ続きが気になる。
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