Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (445)
435話 ゲイルドレイク戦
程よい威力の【灼熱息】が俺の身体を通り抜けた後。
少し逡巡しながらも試しておくべきかと、いくつかの工程だけは挟んでいく。
――【風魔法】――『”暴風”』
――【土操術】――
まずはこの【砂嵐】を止められるか否か。
それは発動後の結果を見れば”比較的容易”だと判断できる。
かなり濃密な砂が舞っているというだけで、人が勢い良く吹き飛ばされるほどの威力ではないのだ。
不用意に飛び跳ねたりしなければ耐えられるため、一時的にこの【砂嵐】を止めることは可能だが――、しかし本当に一時的だな。
このスキルの本領は持続時間であり、ボス固有の【炎獄柱】と同じような発動時間の設定があるだろうと予想された。
では【土操術】で無理やり周囲を舞う砂を制御できないかとも思ったが、これも駄目。
魔力を流すには対象に触れる必要があるため、砂の一粒一粒が独立していると広範囲を強引に制御というわけにもいかなかった。
となると現実的には、【気配察知】や【魔力感知】などを駆使して、視界に頼らない戦いをしていくしかない。
もしくは――
――【結界魔法】――『防壁』
魔力を豪快にぶち込み、ボスも含めた周囲を覆うほどの空間を作り上げるか。
このどちらかだろう。
(魔力消費『2000』で相応の強度と直径50メートルほどの範囲……普通に考えれば現実的じゃないな)
過去の例に照らし合わせれば、レイド戦は30人、50人という規模で同時に戦うのだ。
そうなれば50メートル程度のドーム型で戦場が収まるわけもない。
20メートルはあるボスが動き回るわけだし、【結界魔法】は座標固定型だからこそ、効果が有効であってもすぐに戦場が大きく移る可能性だってある。
そんな中で何度も張り直すなんて、相当な上位層でも無ければまず魔力がもたないだろう。
(となると、もし得られればだが、広範囲の視界を潰す意味でかなり優秀なスキルになるってわけね)
それじゃあ、次だ。
『”雷槍”』
「グォアッ!」
首に向けて放った”雷槍”はそのままゲイルドレイクに刺さって煙を上げるが、しかし宙を舞う無数の砂は明らかに反応し、阻害するような動きを取り始めていた。
それでも刺さったのは、着弾のかなり速い【雷魔法】だから。
であれば、こいつはどうなるかな?
『”岩弾”』
急速に生み出された鋭利な岩弾は、同じように狙いを定めたゲイルドレイクの首に飛んでいくも、周囲を舞う砂の塊に阻害され、明らかに速度を落とされた上で着弾していた。
先ほどのような呻きは聞こえないのだから、実際威力も減衰されて大して出ていないのだろう。
「それじゃあ、次は接近戦だ」
取り出したのは『氷雪剣』。
氷属性付きなので、なんとなく相性も良さそうなこの武器で首を斬り付けると――
「グガァアアアアアアアアッ!?」
「へぇ~」
やはりその動きを阻害するように砂が纏わりつく感覚があり、加えて斬り付けた後には砂を固めた鱗のような防御壁が傷口付近に形成されていた。
斬った後なので意味はなかったけど、剣速が遅いと余裕でこの砂の鱗――【砂硬鱗】というスキルに阻まれるのだろう。
オッケーオッケー。
怒りの籠った腕の振り下ろしを避けると、空気を変えるような、少し変わった啼き声が放たれる。
――俺を襲う、僅かな硬直。
と同時に周囲を覆う風の勢いが増したようだが……
これでもし俺がスキルを得られた時、どのような効果が生まれ、どうように対処される可能性があるかはおおよそ掴めてきた。
【砂嵐】は使用者を中心に、近いほど威力の上がる超広範囲型の行動阻害スキル。
そして【砂硬鱗】はガルグイユの【水鏡】と違い、魔法と物理攻撃どちらに対しても反応するオート防御だが、反応速度は劣るため強者相手では大して使い物にならずといったところか。
逆に有象無象相手なら、消費魔力次第だが鉄壁の防御を誇るのかもしれない。
「うん、概ね把握できたしもういいや、お疲れ様」
「ゴォアアア、ガア……ッ、ァガ……」
もしかしたら第三段階があったのかもしれないけど、こんな見つけにくい表ボスを今後も探してまで狩ろうとは思わないし、もう早く帰って寝たいのだ。
強引に2メートル以上はありそうな太い首を切断していくと、首の骨を砕いたところでアナウンスが流れ始める。
『『レベルが62に上昇しました』
『【灼熱息】Lv6を取得しました』
『【砂嵐】Lv1を取得しました』
『【砂嵐】Lv2を取得しました』
『【砂嵐】Lv3を取得しました』
『【砂嵐】Lv4を取得しました』
『【砂嵐】Lv5を取得しました』
『【砂嵐】Lv6を取得しました』
『【砂嵐】Lv7を取得しました』
『【砂硬鱗】Lv1を取得しました』
『【砂硬鱗】Lv2を取得しました』
『【砂硬鱗】Lv3を取得しました』
『【砂硬鱗】Lv4を取得しました』
『【砂硬鱗】Lv5を取得しました』
『【咆哮】Lv7を取得しました』
――【魂装】――
そしてすぐにステータス画面を開き――
【魂装】の結果が『筋力+794』と、ようやく筋力を引き当てたこと。
二つのスキルが白文字であったことに歓喜し、次いで詳細説明を確認する。
【砂嵐】Lv7 使用者を中心に多量の砂を巻き込んだ猛風を巻き起こす 効果範囲とその威力はスキルレベルによる 発生時間10分 魔力消費110 ※砂地でのみ発動可能
【砂硬鱗】Lv5 物理、魔法属性に分類される攻撃を自動で防御する 反応速度はスキルレベルによる 魔力消費10秒ごとに30消費 ※砂地でのみ発動可能
そして、どちらにも『砂地限定』という文字がついているのを見てしまい、ガックリと肩を落とした。
「そりゃそうですよねー」