Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (454)
444話 下台地の朝食
時計を見て、自分の状態を確認し、改めて一人納得する。
「うん、やっぱり凄いね、コレ」
2日間城下町エリアで狩りを続け、【昼寝】のスキルはレベル4になっていた。
調整し、朝6時に目覚めて、支度をしたらすぐに17時間狩る。
そして1時間弱、ご飯を食べたりお風呂に入り、秘密基地で少し情報を整理したら魔力をほぼ空にして0時に就寝。
こんな健康的な1日を過ごし、俺の身体はほどよく疲れていたはずなのだが、気持ち良く自然起床したらまだ時刻は夜中の3時前だった。
これで【昼寝】とはあるが、夜間でも使用できることは確定だろう。
魔力は全回復し、頭も8時間くらい寝た後みたいにスッキリしているのだから、レベル10にしたら1時間切りも本当に可能なのかもしれない。
「ん~あとは魔力を多く残して寝ればまた変わるのかな……」
そんなことを考えながら裏庭へ。
光源魔道具の下で黙々と仕事をしている仲魔の下へ向かう。
「ジェネ、これもお願いね。鉱物が付着しているから、それは別で。今回食べていいのはこの『カルノタウラ』と『ウガルルム』の肉くらいかな。少なくてごめんだけど」
「分かった。どんどん頑張る」
「問題ない……まだいっぱい残っている……!」
声のする方に振り向くと、素材価値のない魔物の残骸がまだいくつも山のように積み重なっており、その頂上で豪快に飯を食ってるデカい竜がいた。
自分の仲魔とは言え、絵面が恐ろしい。
「……それよりジェネさ、久しぶりにちゃんと見るけど、なんか大きくなってない?」
狩ってきた魔物を上空から吐き出す時に度々見かけてはいたが、こうして面と向かってというのは2ヵ月とか、そのくらい振りかもしれない。
だからなのか、顔つきが少し変わり、身体は大きく、そしてたくましくなっているような気がする。
自分も背がだいぶ伸びたから、ちょっと分かりにくいが……
「カルラが、大きくなったって言ってた。それに力も強くなった」
「へぇ~魔石は食べてる?」
「それは売るからダメって。いいって言われたのだけ食べてる」
「なるほど、それでも伸びるのか」
たぶん魔石は魔物の傷を癒すくらいなのだから、特効薬みたいなもの。
食べればさらに成長を促せそうだけど、さすがに魔石を喰わせるのはまだ早いな。
それは何をどうやっても使い切れないと思えるほど資金が潤沢になってから。
まだまだ今後の使い道を考えれば金は足らないので、もうしばらく普通の餌で経過を観察させてもらおう。
「どんどん食べて、どんどん大きくなってね。期待してるから」
そう言い残し、城下町エリアへ。
もう少しだけ狩りをして一先ずの最低目標スキルレベルをクリアさせてから、確率不明の抽選マラソンを開始した。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
下台地の朝。
いつも揃って朝食を食べるようなので、今日はここに混ぜてもらい、ケイラちゃんが獲ってきてくれた魚を頬張る。
皆の食事は控えめだったが、朝練ならぬ朝狩りをした後なので、俺の前だけはジャイアントワームのステーキにふかし芋まで並んでいた。
「ふむ……面倒とはそういうことだったか」
ゼオが俺の血をゴクリと一杯飲みながら呟く。
「せめて入り口が固定だったら良かったんだけどね。一つもマーキングした所と重ならないし、入り口の出現場所は完全ランダムで確定かな。あ、ゼオも一応転移できるようにしておく?」
「いや、我が移動するとなると、ストアリングの貯蔵魔力を使うことが前提になるだろうからな……」
「あーそれは気にしなくていいよ。あそこ、環境が特殊だから」
「どういうことだ?」
「言葉にすると難しいんだけど、理から少し外れているっていうか、この世界のどことも接触していない亜空間の中にポツンと存在している感じ?」
「??」
ダメだ。
ゼオだけでなく全員が意味不明過ぎて食事の手が止まっているし、俺も自分で言っていて意味が分かっていない。
「まぁ結果だけ伝えれば、この拠点から夢幻の穴に入って、どこにも寄らず真っ直ぐ拠点に戻ってくれば、使う魔力はそれぞれ『1』だけで済んじゃうの。それは俺が行った草原エリアも城下町エリアも変わらずね」
「目の前に存在するのと、さして変わらぬということか?」
「そそ、その場所に繋げさえすれば着く、みたいな? だから魔物相手に何か練習するならいいかもね。人いないし、魔法ブチかましたって壁とか絶対壊れないし、3つのエリアで魔物の強さも変えられるはずだし」
「すっごー! ねぇロキ、早くSランク狩場行ってきてよ! 私行ってみたい!」
まったく、果物を指でほじってるこの小娘は俺とゼオの話を聞いていなかったのか?
呑気なことを言っているエニーに、冷めた視線を送る。
「エニー君、その辿り着くまでがどれほど大変か分かるかね? これは推測だけど、100組のパーティが同時にその狩場を目指したとして、1組とか2組とか、たぶんそのくらいの少数がなんとかSランク狩場に入場できるくらい確率は低いと思うよ」
「えー! そんなの絶対無理じゃん!」
「その間、水もない砂漠で『本物の入り口』を探さなきゃいけないんですよね……私なんてすぐ干からびちゃいます……」
「ダークエルフの人達はよくそんな所で頑張ってたよね~」
搔い摘んだ話だけ聞けばそう思うかもしれないけど、水の問題さえ解決できればヘルデザートで13種。
夢幻の穴で推定45種という、とんでもない魔物数が一帯に生息していたのだ。
俺が知る限りそんな場所は他に見当たらないし、さらに幅広い鉱物まで手に入るのだから、厳しい環境ながらも広範囲に住み着いた理由はよく分かる。
天候操作型魔道具を取り出したら雨が降ったってことは、普通に【水魔法】を使えば水が湧いて、オアシスなんかも各所に点在していたのかもしれないしね。
「ロキ、それでもお前は行くつもりなんだろ?」
朝から鼻の頭を赤くしたロッジが、期待を滲ませた瞳で俺をジッと見つめる。
当たり前だろ、この酔っ払いめ。
「当然、オリハルコンがあると信じて狙い続けるよ。かなり時間掛かるかもしれないけど」
「ふふ、ふはは! なら俺は、
SSランク
の素材も問題なく扱えるように、ひたすら精進するしかねぇなぁ!」
「ボス素材でも使ってどんどんやっちゃってよ。この世界に存在している以上、絶対にどこかで入手する手段はあるんだから、仮に今回外したって俺が他から採ってくるし」
まぁ、そうは言ってもまず外すことはないだろう。
それどころか、ここでしか手に入らない可能性の方が高いくらいまである。
だから古代では少量出回って――
「あの、ロキさん、一つお聞きしたいことが」
「ん?」
「未確定のSランク狩場や神鉱オリハルコンの存在は置いておくとして、実在することが判明した《夢幻の穴》の情報は、世に広める予定なのですか?」
なぜか凄く、それこそロッジ並みに興味のありそうな顔をずっとしていた。
そんなリコさんが、不意に真剣な眼差しで俺に問いかける。
「あ――……どうしようね。全然考えてなかったけど、なんで?」
「あ、いえ、どうするのが良い悪いとかではなく、単純な興味本位なんです。私が知る限り、ロキさんの話しているその情報はどの書物にも載っていません。相当希少で、かつ有益な情報であることは間違いないはずですから」
「だろうね。ハンターギルドでさえ情報掴んでないっぽいし」
「だから、その、そんな情報をこれからどう扱うのかなって、凄く興味が湧いてしまって」
知識欲の強いリコさんならでは、かな。
まだ本心は別にありそうな気もするけど……
「とりあえず、軽はずみに公開はしないと思う。まず普通の人が気軽に行けるような場所じゃないし」
「で、あろうな。かつてのオーマのように、生活拠点を近場にでも置かねば通えるとは思えん」
「もしくは問題の多くを解決できる【空間魔法】所持者って話になるけど、そうなると厄介な人間に目を付けられる可能性もあるしね」
この言葉に、ロッジの鼻がピクッと動く。
そしてリコさんの表情は変わらずか。
つまり大事な情報は公開して共有しろとか、そういう話をしたいわけでもないらしい。
となると、これかな?
「でも事実として、情報を残すことには意味があると思う。だからもし次のエリアに辿り着いて《夢幻の穴》を丸裸にできたら、その時は関連する書物の情報を更新してもらおうかな、リコさんに」
「……ッ! ぜ、ぜひ! 狩場、魔物、鉱物に、歴史書……あ、それに亜人に関連する書物も、多くがその内容を改める必要が出てくると思います。なのでぜひ、見つけられたら詳しい内容を私に教えてください!」
「もちろん。今後もこういうことは出てくると思うから、その都度お願いね」
知識欲が強いからこそ、偽りの情報のままであることが許せず、真実に書き換えておきたい。
そんな理由ならいくらでも協力しよう。
自分達が見るだけなら、情報の鮮度と精度が高いことで困る状況なんてないのだから。
さて、気付けば飯を食っているのは俺一人。
次々と席を離れていくので、俺はロッジに視線を向けながら仕事の依頼をしておく。
そのために一度ここへ戻ってきたわけだしな。
「ロッジ、もう背は落ち着いたはずだから、そろそろ装備作ってくれない?」