Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (463)
453話 地獄の判別
足取り軽く、長い下り坂を歩いていく。
許可があってもなくてもやることに変わりはないが、やはり許可してもらった方が気持ちよく動けるからな。
ロッジの仇をコッソリ討ってやろうくらいに思っていたら、微妙に話が大きくなってきている気もするが……
さてさて、どこまでの規模になるのか。
これは少し、マッピングも休憩かな?
そんなことを思いながら大部屋を覗き、思わず声を漏らす。
「おっしゃ、やっぱり回復してるじゃーん!」
場所はフレイビル、《クオイツ竜葬山地》の地下深く。
球体状のボスフィールドに入ると、地底湖の底には巨大な影がゆっくりと泳いでいた。
その姿を確認してから、俺は『破天の杖』を握る。
――【氷魔法】――
『湖よ、凍れ』
ピキピキ……
急速に湖面から凍結していくその上に立ち、繰り返し繰り返し、奥深くまで凍り付くように唱え続ける。
そうすれば、先ほどまで悠々と動いていた巨大な影の動きが鈍くなり、やがてピタリと止まった。
これで問題ないだろう。
『消失』で氷を掘り進め、身動きが取れなくなっている氷漬けのガルグイユに向かって、
――【発火】――
炎を纏わした特大剣を振るう。
ん~こないだのゲイルドレイクもそうだったけど、ボスは耐久設定が違うのか、明らかにAランクの雑魚魔物と比較しても硬いな。
それでも豪快に3度斬り付けると、ようやく首の骨まで切断されたようで。
『【丸かじり】Lv7を取得しました』
『【廻水】Lv6を取得しました』
『【鏡水】Lv5を取得しました』
『【無面水槍】Lv6を取得しました』
「残念、レベルは上がらずか」
お待ちかねのスキル取得ログは流れ始めるも、今回は残念ながらレベル上昇まで至らなかった。
まぁしょうがない。
――【魂装】――
「ん~魔法防御力『805』か……おっ、上書きできるじゃん」
【転換】のポイントがあればもう一つくらいは上げようかなと思っていたけど、【魂装】レベル6からレベル7に必要なのは20万ポイント。
まだ半分も溜まっておらず、今回は数値が上回れば良しくらいに思っていた。
魔法防御力がグリムリーパーの『665』から、ガルグイユの『805』へ。
いいじゃない、いいじゃない。
ボス素材をゲットしつつ、こうして上げられるステータスを少しずつ伸ばしていけば、今こうしてあっさり倒しているように、いずれは大きな不安を抱えることなく裏ボスを倒しに行ける時が来るのだろう。
さて、段階ゴリゴリすっ飛ばしちゃったから、水が凍ったままで全然引いてないけど……
地獄の判別やったりますかね!
そう一人気合を入れて、地底湖の穴の中へ。
腐敗のドラゴンを見学しに向かった。
「ひぎ、ッ……ふ、ふざ……け……うぉぇえええ……ッ!」
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
「ロ、ロキ王? かなり顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」
オムリさんに問われ、苦笑いを浮かべながら軽く返事をする。
「あぁ、大丈夫ですよ。変なモノを食べただけで、だいぶ良くなってきましたから」
約1時間半。
あのドラゴンを見てから崩れ落ち、俺が泣きながら床に頬ずりしていた時間だ。
なんとなく、アレはまだ無理だろうと思っていたから、この結果に対してショックということはない。
あとはこの時間を短縮していけば、これもまた一つの目安になる。
今はまだその程度の気持ちだ。
まぁ試した後が地獄過ぎるので、もう暫くやるつもりはないが。
案内されるがままに、いくつもの――、本当にいくつもの倉庫を経由し、片っ端からその中身を収納していく。
前回は大半が食料や日用品といった支援物資だったけど、今回はだいぶ鉱物や武具類、それに魔物素材の比率が増えてきた印象だな。
ようやく他所から金を稼ぐため、本気になって動き出したってところか。
「そういえばロキ王、陛下に伝えられた結果は如何でしたか?」
何気ない会話の中で、するっと挟み込むように。
さりげなさを装いつつ、ようやく聞きたかったであろう言葉を吐き出すオムリさん。
「許可は頂きましたよ」
「そうでしたか。それは良かったですね」
「ただ、オムリさんの望む結果になるかは分かりませんよ? ロズベリアの大掃除が始まるかもしれませんから」
そう伝えるも、オムリさんの表情は崩れることなく、手を揉み揉みしながらにこやかに笑っていた。
ったく、この手揉みハゲ。
どこまで想定してるんだ?
これだけ余裕綽々ということは、間違いなくバルニールの件には関与していないんだろうけど……
オスカー王のように、他者を圧倒するくらい感情を表に出してくれた方が、よほどやりやすいと感じてしまう。
「それではこちらが配送先の一覧です」
「へぇ~さっそくジュロイまで入れてくるとは、仕事が早いですね」
「既に大陸中央は、粗方各方面への根回しを終えておりますから、あとはロキ王がその国に赴くかどうかだけ。皆、ロキ王が足を運ばれるその時を、今か今かと待ち望んでいますよ」
「止めてくださいよ。これを仕事にするつもりなんてないんですから」
そうは言いながらも、先ほどチラリと見た30億ビーケを超える報酬額に、俺の頭の中でもう一人の自分が小躍りしていた。
前回もだいぶ多いと思ったけど、今回は運ぶ荷物の量がさらに増え、かつ価値が明らかに上がったこともあっていきなり3倍以上……
半日もかからずこの額が稼げるとか、俺がこの場に一人なら間違いなく高笑いが止まらなくなっている。
これ見よがしに俺の様子を窺っている手揉みハゲの前では絶対顔に出さないけどな。
「それじゃ行ってきます。一通り回り終わったらまた報告に戻ってきますので」
「お願いいたします。それまでに『レサ一家』の拠点や幹部も含めた構成人員、それに要注意人物など、私が分かる範囲の情報は纏めておきますので」
「……了解です」
この人、確実に味方だと分かれば頼もしいんだろうけどなぁ。
そんなことを考えながら、各町への配達に向かった。