Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (467)
457話 共同作戦
さて、ここからどうするか。
俺が3人を始末したことで、その光景を見ていた一部の者達からは感謝や称賛の声が上がっていた。
するとそれが伝播し、今は地下1階が割れんばかりの歓声に包まれているが……
事はそう簡単な話でもなく、問題はここから。
拠点とは言うも、ここはあくまで奴隷商館であり、レサ一家の一味がそこまでいるわけではない。
かなり規模の大きいロズベリアという街の中で、レサ一家の構成員が東区を中心に広く活動していることは分かっていた。
コイツらをいかに逃がさず、効率的に集めて始末できるか。
今まで中途半端に手を出さなかったのもそのためで、最初は数に任せて威勢良く調子づくも、どうせこの手の連中は自分達が不利と理解すれば他を見捨ててでもすぐに逃げ出す。
親玉のレサっていうのがここにいれば、強制招集でも掛けられたのかもしれないけど、たぶんここにはいないっぽいしな……
(決して不利とは思わせず、調子に乗らせたまま……可能な限り自発的に集めようとすると……)
そのために何ができるか。
後ろを歩くフェリンに視線を向けるも……、うーん。
あまりの能面っぷりに背筋が寒くなってくる。
家帰ってこんな顔した奥さんが待っていたら、黙って玄関で土下座するわ。
「フェリン? いつまでもそんな顔してたら怖いよ?」
「だって……」
「あぁ、フェリンはこういうのを直視するのって初めてか」
「うん。リアが機嫌悪かったり、ロキ君がよく誰かと戦ってる理由が、やっと分かった気がする」
「んー……まぁ知ることは大事だけど、慣れない方がいいよ。特にフェリンは」
「……」
感情の浮き沈みが激しいタイプだし、何よりフェリンには明るく笑っていてほしい。
こんなのは望んでやっている俺と、専門のリアに任せておけばいいのだ。
――、ガンッ。
ん?
ガンッ! ガンッ!
歓声に紛れて聞こえる、何かを強く叩く音。
元々階段があった場所に近づくほど、その音は大きくなっていく。
あぁ、やっぱりか。
これだけ地下が騒がしくなれば上も気付くかなとは思っていたけど、どうやら俺が塞いだ石壁を破壊しに掛かっているらしい。
ならば急がないとな。
「よし、フェリン協力して。ここも戦場になる可能性があるから、まずは捕まっている人達、纏めて外に逃がすよ」
その後は流れ作業で事を進めていく。
俺は【空間魔法】の『消失』で、フェリンは何をやってんのかはっきりとは分からなかったけど、鉄格子の鍵穴に指を触れて開錠していった。
そして全員を地下牢獄から救出したら、何回かに分けて俺だけが『転移』で外に運んでいく。
俺自身はもう所持していることを公にしているのでどうでもいいが、フェリンまで【空間魔法】の所持者なんて話が広まると大変な騒ぎになるからな。
全ての牢獄が埋まっていたわけでもないので、地下1階にいたのは総勢100人ちょっと。
先ほどいた酒場の店主は仰天してひっくり返っていたが、あそこに移動する程度なら大した魔力消費でもない。
みんな腹減ってそうだったし、置いてきた迷惑料であの店主なら何かしら振る舞ってくれるだろう。
「終わった?」
「うん。って言っても、地下1階は査定待ちの一時的な収容場所みたいで、値付けされて商品として並んでいる人達は上階とかにいるっぽいけどね」
「え! ここだけじゃないんだ!?」
「上はここ以上に人が多いんじゃないかな。まぁあとは俺がやっておくから、フェリンはもうさすがに帰りなって。ここからはさっきみたいな連中ぶっ飛ばしていくだけだし」
「だからだよ」
「ん?」
「だからついてきてるの。ロキ君がおかしくなっちゃったら困るし」
「いやいや、大丈夫だよ? 貰ってる情報だとレサ一家の構成員は推定2000~3000人らしいから、この程度じゃ何も変化が起きない可能性の方が高い」
「それでも、心配だから見てるの!」
「ええ……」
困ったな。
一人の方が動く分には楽なのだが、俺を心配してくれてとなると、それらしい断り文句が出てこなくなる。
普通なら何かあると危ないって言えるけど、フェリンに危害が及ぶわけもないしなぁ……
「ん~心配してくれるその気持ちは凄く嬉しいんだけど……ただ今回だけにしてね。昔ちょっとリルといただけで未だに姉は? なんて話が出てきたりするし、毎回その手の現場にフェリンがいたら、間違いなく噂が立って後々面倒なことになるから」
「うぅ……分かった」
「その代わり――、うん、そうだな。せっかくだし、今回だけは存分に手伝ってもらおっかな?」
「ほんとに!? やるやる!」
なぜ、こんなやる気になってるんだろう……
よく分からないけど、やっと笑顔が戻ってきたのだから良しとしておくか。
「とりあえず、ここで捕まってた人達がもういないってのはバレないように、曲がった直後の『1番』地下牢手前と、『51番』地下牢手前にそれぞれ極厚の石壁作って――……」
「うんうん!」
「そうすると、入り口の階段から一直線に、50メートル近い通路がそのまま『ゴミ箱』になるから――……」
「おお!」
「フェリンは上が溜まったらここにポイポイって、生かした状態のまま――……」
「なるほどー!」
なんとも先の読めない、不確定要素の多い作戦。
それでもやるべきこと、やりたいことをフェリンに伝え、お互い配置に付きながらポロポロと。
崩れて穴の開き始めた石壁を見つめた。