Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (491)
478話 秘境、スチア連邦
場所は茶色い荒野がどこまでも広がるオルトラン王国。
その南東部に存在する、かつて勝手に作った傭兵バーシェの墓の近くから南部を広く眺める。
この付近に連なる山々の稜線が国境になっており、眼下に広がるスチア連邦は景色が一変して緑に覆われていた。
そして手元には一枚の木板。
「うーん……」
書かれていたのはクアドお手製の地図だ。
幼稚園児が描いたラクガキのような適当さを醸し出しているが、とりあえず北西――、つまりオルトラン側から馬車で3日半ほどの場所に、スチア連邦の首都『タルサラム』という町があり、そこまでは交易もあって確実に人が出入りしているとのこと。
しかし問題はそこから先で、特に南部は秘境も秘境。
出身であるクアドもどうなっているのかまったく分からないらしい。
たぶんハンスさんのエリオン共和国と繋がっているはずだけど、さてさて、どうなるかな?
期待と不安が入り混じる中――。
この時はまだ、そうそうに探索が中断するとも知らず、日中はスチア連邦、夜間はパルモ砂国でSランク狩場探しという生活をスタートさせた。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
そして約2時間後。
「えっ、ここしかハンターギルドないんですか?」
マッピングを進めながら辿り着いた首都『タルサラム』、そのハンターギルド内で俺は、縋るように受付のハムスターみたいなお姉さんへ情報を強請っていた。
いつもの流れで真っ先に資料室へ。
本には見覚えのあるFランクとEランクの魔物しか載っておらず、他に有力な上位狩場はあるのか。
いつもならばここで情報を収集し、移動ルートを選定するのがお決まりの流れだったのだ。
しかし――。
「ここだってできてからまだ10年も経ってないんだよ? みんな自分達で使っちゃうから、お金に換える習慣は『タルサラム』から離れるほど無くなってくるしね~」
「確かに、建物は綺麗な感じがしますけど……」
そういえばクアドも、この国にハンターギルドなんてあったっけ? とか言っていたことを思い出す。
首都とは言うも、規模感で言えば今まで見てきた中規模の町程度。
直前に自由都市を見ているだけに、木造の平屋ばかりが目立つ建物や、道端でキャンプファイヤーの如く火をくべ、大鍋で料理をしている姿など、文明は他所より1段階遅れているような印象を受けるのだ。
お姉さんが言う通り、首都から離れた田舎になると、部族単位で自給自足や物々交換が主流の生活でもしているのだろう。
なんせ上空から見れば、はっきりと分かる街道がこの町で終点になってしまっているくらいなのだから。
「それでも、こう……狩場の話を聞いたりとかありません? あっちの方面にかなり強い魔物が出るよ~とか」
「ん~、ずっと東の方にBランクの狩場があるとは聞いたことがあるけど……同じスチアでも奥地は縄張り意識がかなり強いし、君、見るからに人間でしょ? 余計に危ないから興味本位で行かない方がいいんじゃないかなー?」
「そうですか……情報ありがとうございます」
有益な情報は聞けた。
が、これもある程度は予想できたことだ。
傭兵バーシェはBランクのソルジャーアントを大量に従えていた。
そいつらをわざわざラグリースの≪デボアの大穴≫から調達したとは考えにくく、他の魔物は近場のヘルデザートに存在していたのだから、この近辺にもソルジャーアントの生息域があるだろうとは思っていたのだ。
まず東にあるこの狩場が濃厚――、つまりスチア連邦の最高位狩場は、既に散々狩り倒した蟻の巣である可能性が高いということになってしまう。
はぁ――……
その事実に気付いてちょっとテンションが下がってきたけど、こればっかりはしょうがないもんな。
行かなきゃ分からないこともあるのだから、とりあえず今回は東側から攻めてみるか。
そんなことを考えながら、人間は10人に1人も存在しない獣人だらけの町を探索。
スチア連邦唯一らしい教会は辛うじてあったが、傭兵ギルドは首都のこの町にも存在しないこと。
大きな広場で開催されている市場は連日開いているようで、ここはかなり賑わっていることを確認したのち、北側のマッピングを埋めるようにパルモ砂国を左手に見ながら東へ向かった。
……そして、日中の移動を続けて2日目。
眼下の森がいつの間にか草原に変わり、そしてどこまでも続く畑へと変わり、それでもそのまま東へ進むと、視界の先に町が見え始める。
なぜか昨日訪れた首都と同じような規模感であり、建物も不思議と首都より立派。
よく分からないまま、それでも町があれば向かうわけで。
パッと見渡す中で8割が人間。
獣人もいるにはいるが、首都と圧倒的に比率が違うことで強烈な違和感を覚えた――というより、この時点でもう俺の中では確信に変わっていたと思う。
だから、
「すみません、ここってどこの国ですか?」
「ん? アルバート王国だけど? なんだ、あんた迷い人か?」
町を歩く人にそう言われても驚くことなく、お礼を言いながらすぐに地図を確認する。
ははは……いやいや、おかしいな。
国
境
線
、どこにいったよ?