Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (554)
539話 何が生まれるのか
仮眠を取り、魔力と体調を万全にした俺は、ジュロイ王国内にあるBランク狩場。
《嘆きの聖堂》の敷地内に建てられた宿屋へ向かっていた。
「――というわけで、リュークさん。念のため、一時的に避難してもらえませんか? 送迎は僕がやりますし、向こうの飲食代や宿泊費も全てこちらでもちますので」
「それは構わないが……本当に一人でやるのか?」
既に少し酒が入り、ほんのり顔を赤くした副隊長リュークさんが、困惑した表情で問いかける。
「完全受肉体の強さが分からない以上、それが一番安全でしょうから」
「いや、でもそれだとロキに何かあった時はどうするんだよ」
「最悪、僕一人なら上空に逃げられますし、時間さえ稼げればその場からの離脱もできます。ただ周囲に人がいれば、迂闊にそのような行動も取れなくなるんです」
「それは確かに、そうなんだろうけどさ……」
かつては共闘もしているのだ。
隊長であるアウレーゼさんから裏ボスに関する話も聞いているようで、本気で心配してくれているのは分かるけど……
だからといって、参戦というのはさすがに現実的じゃない。
「今回は確実に生まれることが分かっている完全受肉体と、それにもう1パターンも試します。初回だからこそ何が起きるか分からないので、今回だけはお願いしたいんです。どうなったのか、結果はそれぞれ報告しますから」
利用している狩場を夜間とは言え、占有するために移動してもらうわけで。
頭を下げると、リュークさんは大きく息を吐きながら首を振った。
「はぁ……分かったよ。ただ、ロキ。隊長が話してくれた計画は俺も面白そうだなって思ってるんだ。こんなところで死なないでくれよ」
「ん? 計画?」
「あれ、聞いてないのか? 隊長は裏ボスの情報を広く集めるためにも、
組織
を立ち上げようと各方面を回っているんだ」
「へえ、そんなことを……」
まったくの初耳だが。
しかしボスに強い興味を示すアウレーゼさんなら、そのような行動を起こしていても不思議ではない。
まぁそのうちまた会えるのだから、その時にでも本人から詳しく話を聞けばいいだろう。
それよりも今は、目の前のハードルを越えることに集中する。
「安心してください。何が生まれるかは分かりませんが――、どちらにせよ、一人であれば本気でやりますので」
そう告げると、リュークさんは一歩後退り、俺を見つめながらゴクリと喉を鳴らした。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
奥にある宿屋と、それに入り口にある宿屋も、滞在していた人達はまとめてジュロイ王国の王都フォブシークへ移動してもらった。
狩場にも人がいないことは確認したし、深夜のこの時間帯にわざわざこんな不気味な場所で狩り始める者もまずいない。
これで少なくとも周囲5kmほどは、俺以外に人なんていないだろう。
「さて、それじゃいくか」
付近の魔物を掃除してから一人呟き、まずは一番不発に終わる可能性の高そうな『外部の魔物の骨』を放出していく。
溜め始めた時期や骨の大きさを考えると、ヘルデザートに生息していた魔物や、拠点周辺のAランク魔物。
あとは《夢幻の穴》の『草原』や『城下町』にいた魔物の骨が大半だろう。
FランクからAランクの、【甦生】スキルを持たない魔物を投入すると果たしてどうなるのか。
何も起きない可能性が最も高く、仮に起きても素材の質という観点から事故が起きる可能性は極めて低い。
そう思っていると――
ゴゴ……ゴギギッ……ボギ……ギゴゴゴッ……
「いけたか……」
――かつてと同じように、骨を擦り潰す不気味な音を奏でながら、祭壇とも呼べそうな穴が淡く光り始める。
作動はした。
ならば第一関門は突破だ。
あとはここから、何が生まれるのか。
――【気配察知】――
――【魔力感知】――
――【身体強化】――
――【忍び足】――
――【魔力纏術】――魔力『5000』
念のための長期戦も視野に入れ、消費を抑えたこの段階からまずは様子を見る。
そう判断して【広域探査】を使用しながら様子をうかがっていると。
「……いた」
かつて見た姿形とは違う。
以前よりも小さくて歪な、グリムリーパーかも疑わしい存在が壁面を這うように移動していた。