Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (555)
540話 次に繋がるヒント
「ふーむ……どうしたもんかな……」
目の前に転がる、体長5メートルほどの骨の塊。
グリムリーパーとも違う、この謎の魔物を眺めながら一人唸る。
当たりだがハズレ。
この魔物を表現するならまさにコレで、狙いは外していなかったわけだが、コイツ自体は気合を入れたのが馬鹿馬鹿しくなるくらいに弱かった。
スキル構成を覗いてもグリムリーパーの超劣化版といったところで、わざわざ他所の骨を集めて反復する利点は見当たらず、この骨も強度や大きさを考えればさほど価値があるとは思えない。
これが、この狩場特有のスキル【甦生】を所持しない魔物を放り込んだことによる弊害なのか。
それともSランク魔物の骨で統一すればもっと大きな変化が起きるのか。
それは分からないが……
「ん~やっぱり最低限、『肉』を付けさせなきゃダメなのかな?」
そう呟きながら魔力残量を確認し、全快になったことを確認してから次の準備に入る。
放出し始めたのは、前日にここで回収したBランクの魔物達だ。
特に腐肉の塊であるトロルデッドを中心に狩りまくったので、これなら肉が足らないなんてことはまずないだろう。
こちらは確実に強化版が生まれる。
あとはそこから、進化を遂げるのかどうか。
再び自己バフを掛けながら戦闘準備に入り――
「チッ……これもハズレか」
――天井に張り付いたグリムリーパーの姿を確認し、思わず舌打ちが漏れる。
腹部はもちろん、頭部から多脚に至るまで、鋭利な爪以外はしっかりと腐肉に覆われており、骨は見える範囲で一切露出していない。
しかし、スキルを覗くとかつてのグリムリーパーが所持していた内容と同じ構成。
スキルレベルも違いが見られず、狙いは失敗に終わったことを理解する。
ただ強くなっただけ――、そんなボスになんの需要があるというのか。
「くそっ!」
あくまで本命は3つ目だと分かっていたけど。
それでも腹いせに、俺は腐肉で覆われたグリムリーパーの頭を全力で蹴り飛ばしながら、ほかの選択肢を模索した。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
「ただいま~」
朝、リュークさん達を元いた宿屋に送り届けてから下台地に顔を出すと、皆が食事を摂っている最中だった。
「あ~その顔は絶対空振りした時の顔だ。ボク分かるんだからね~」
カルラがグラスに並々と入った血を飲みながら面白そうに言う。
はぁ……
カルラに突っ込まれるほど顔に出ていたとは。
でもしょうがないだろう。
何か起きるかもと、内心はかなり期待していたのだから。
「正解。次に繋がるヒントは得られたけど、今回はダメだったわ」
言いながら、完全受肉体の死体を皆の前に放出すると、大騒ぎするエニーやケイラちゃんに混ざってロッジが強く反応する。
「む、そいつがグリムリーパーの本来の姿ってやつか」
「そうなるのかな。ちゃんと受肉させてみたんだけど、それだとただ強くなっただけで、根本的に魔物の性質が変わるようなことはなかったんだよね」
「ふむ……具体的にどう強くなった?」
「ん? だいぶ素早くなって硬くなったのと、あとは振り下ろしてくる鎌の威力も、骨だけの時よりはだいぶ上がってたと思うけど」
それでも苦戦するようなことはなく、とっとと倒してしまったのでさほど印象には残っていなかった。
だが食事の手を止めたロッジは、グリムリーパーの死体を触りながらグルリと回り、納得したように頷きながら感想を漏らす。
「この皮の弾性はクイーンアントに近いが、厚みも十分あるからより物理耐久寄りか? 見ただけで身が竦むような独特の感覚も以前と変わらないし、防具素材としてはかなり優秀だろう」
「へ~そうなんだ? じゃあもしかしてこっちも活用できそう?」
言いながら追加で取り出したのは、もう一つの受肉体。
原型はグリムリーパーに近いものの、複数の魔物を混ぜたその姿は歪と表現するしかなく、左右が非対称なのは当然として、一部には以前の魔物の原型がそのまま張り付いたように残されていた。
「な、なんだこりゃ……」
「不気味な姿だが、要所要所に見覚えがあるな。これは《夢幻の穴》のSランク魔物を混ぜているのか?」
「そそ。ここに溜めてた魔物の骨じゃ、変なのが生まれたけどだいぶ期待外れだったから、すぐ城内に籠ってそのまま穴にぶっこんでみたんだよね」
「ふむ。その結果、このような奇怪な魔物が生み出されたわけか」
「せっかく人払いもしたし、どうせならと思ってさ。ただそれでも裏ボスには変化しなかった。形状はちょっと変わってきてるし、強さはそっちの受肉したグリムリーパーよりも強かったから、方向性は間違っていないと思うんだけどね」
よりランクの高い魔物を突っ込めば、強い変化が起きる可能性もある。
しかしそれを試すには、現状『表ボス』くらいしか投入する魔物がいない。
さすがにそれは――、ちょっとやり過ぎだろう。
そもそも素材が足りないし、もし手元にあったとしても、この段階だとまだ勿体ないと感じてしまう。
生み出したグリームリーパーの骨を再び穴に大量投入して、さらに進化させるっていうのが一番手っ取り早いし、なんとなく本命な気もしてくるんだけどね。
ゼオと話している間も、ロッジは真剣な眼差しで不気味な魔物の死体に触れていく。
そして出た結論はこれらしい。
「こいつは素材に回せねーよ。混ざり過ぎてて特性を生かしにくいし、この辺りなんざまんまアースドラゴンの皮と同じだ。強化されている感じがまったくしない」
「はぁ~そっか。それじゃコイツは丸ごとジェネ達のご飯かなぁ」
「ふふ、残念。ボクの出番はなしだったね」
確かに、受肉体のグリームリーパーは見るからに腐肉なので、解体したところで餌に回すくらいしか使い道もないだろうが……
そんなことを言うカルラに、目を細めながら言葉を返す。
「まぁ、次が本番だけどね。ほぼ間違いなく出るはずだし、少し寝たらすぐ行ってくるから覚悟しておいて」
「え!」
それだけを告げ、一度休憩を取るために秘密基地へ移動した。