Will I End Up As a Hero or a Demon King RAW novel - Chapter (82)
81話 望まぬ休日
引き籠り生活11日目。
俺は真昼間から風呂に入り、緩やかに蛇行する下流の景色を眺めていた。
本日は休日。
ついでにここで人との待ち合わせである。
10日目の時点で西側の素材回収も拠点付近まで伸びてきていたため、次はさらに奥へ進んでいくか。
それとも川から多少離れるものの、東側おおよそ500~1000メートル付近を中心に狩っていくか。
その相談をするべくアルバさんやミズルさんの下を訪れた。
が、見つけて早々、なぜか彼らから
泣
き
が入ってしまった。
いくら稼げるといっても、ここまで連日働いたことが無い。
だからそろそろ1日休ませてくれと。
なんとも根性の足りない人達である。
稼げているならそんな泣き言、せめて1ヵ月は経ってからにしろと個人的に思うところはあるも、どうやら2日目から参加した他のパーティの人達ももうヘロヘロなようで、俺に会った人が代表して進言すると満場一致で決まっていたらしい。
川の西側になってオークの出現頻度が上がり、厳選すれば重量がかなり重くなるのも原因の一つと予想できる。
となると、俺は何も言えない。
身の安全が保障されたデスクワークではなく、一歩間違えれば魔物に殺されるそれなりにリスクの高いお仕事だ。
いくら素材回収がメインとはいえ、流れてきた魔物との戦闘だって少なからずあるわけだし、以前あった時に怪我を負った人の話も、粘糸で芋虫になっていた人だって見ている。
精神も肉体も、摩耗すれば死人の出る可能性が高くなるので、それなら止む無しと俺は了承したわけだ。
当初から休みたい時は休んでいいよと言ったのは俺だしね。
ただそうなると、俺はどうするか? となってしまう。
1人で狩ってもいいのだが、そうするとそのエリアのオーク肉は確実に鮮度が落ちて無駄になってしまう。
既に拠点周辺でそれをやってしまっているので、1人先行して狩るというのはあまり良くないことだろう。
かと言って奥に行くのも正直面倒くさい。
俺も毎日ヘロヘロのクタクタになっているので、できれば手近なところで効率的に狩りたいものである。
なら、いいかと――
皆が休むならついでに俺も休んどくかとなって、真昼間から風呂という行動に出てしまっている。
ちなみに待ち人とはアルバさん達だ。
いったい何人来るのか分からないが、「どうせ休むなら風呂に入りますか?」と、なんとなしに俺から話を振ってみた。
その言葉にアルバさん達第4部隊のメンバーは、全員が鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていたけど、俺が自作で風呂を作ったこと。
拠点自体は森の入口から川沿いに1kmくらいの、この付近に構えていること。
周りの魔物はある程度掃除しているから比較的安心だし、もし入るなら俺も休むことになるので護衛すること。
当然タダ風呂であることを伝えると、皆の目の色は一斉に変わっていった。
まぁ宿屋のビリーコーンに風呂やシャワーが無い時点で各家庭にも無いだろうし、そもそもベザートの町に風呂付きの家があるかすら分からないんだ。
たぶん存在を知ってはいるけど、人生で一度も入ったことが無いという人もいるだろう。
入る入ると大騒ぎになってしまったため、それならと、入るのはタダで良いけどマイ石鹸くらいは自分で持ってくること。
ついでに鍋とか野菜を持ってきてくれれば、多少の魚と有り余るオーク肉があるのだから、ご飯食べながらお風呂に入れるかもねと伝えておいた。
当然皆の瞳が燃え上がっていたのは言うまでもない。
とても疲れて休みを願う人達には見えなかった。
そして今、後方から武装した団体がこちらに向かってきている。
なぜか数人、いつものように籠を背負っているのが気になるけど。
というか、明らかに30人以上いる気がするんだけど……
なんだか予想より大変なことになりそうな気がすると思いつつ、女性を遠目に発見してしまったため、俺はそそくさと風呂から上がって服を着直した。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
「……」
「これが、風呂か……」
「うぉーすげぇ!!」
「川のど真ん中に作るとか正気じゃねぇぞ!」
「想像より遥かに大きいわね」
「これなら3人4人くらい同時に入れるんじゃねーか?」
皆が口々に感想を述べている中、俺は風呂の横で放心していた。
遠目にミズルさんパーティにいるロイズさんは面識があるためすぐに分かったが、なぜ他にも複数の女性がいるのだろう?
普通男性もいるような場所なら、恥ずかしさから控えるもんじゃないのか?
それともまさか、男女別々なんて、そんな現代の銭湯やスパ施設みたいな場所でも想像していたのだろうか?
でも皆さん、1つしかない風呂を見ても平然としているしなぁ……
この世界の人達の道徳や羞恥心というものは本当によく分からん。
おまけに……
「ロキっ! 凄いの作ったな!」
「来ちゃった!」
「初めてのお風呂、楽しみ!」
なぜジンク君に、メイちゃん、ポッタ君までいるのだろうか……?
ここ、ルルブの森なんだけど?
ロッカー平原より危ないところなんだけど!?
「メイちゃん……来ちゃった! じゃないでしょ! ここ危ないところなんだよ? 大丈夫なの?」
「その危ないところで、ロキ君だって昼間からお風呂入ってたじゃん!」
「タダで風呂入れるってミズルさんに誘われたんだよ。魔物もだいぶ減らしてあって、おまけに護衛もビックリするくらいいるって」
「そうそう。だから来たんだ」
確かに、護衛はビックリするくらいいるね……
そりゃそうだ。
ここで素材回収していたEランクハンターがほぼ全員っていうくらい来ているんだから、護衛依頼も驚きの大護衛団だろう。
そして他の見慣れない人達は――たぶん奥さんとか彼女さんかな?
さすがに小さすぎる子供はいないようだけど、明らかにハンターじゃなさそうな人達は誰かの家族なのかもしれない。
あとはジンク君達と同じように、誘われてよく分からないまま来たっぽいFランク以下のハンターも何人か。
籠を背負っている人達は、籠からネギやゴボウっぽいのがハミでているから食材とか持ってきたんだろう。
なんだかお祭り会場みたいになっちゃってるなぁ……
まぁいいか。
風呂はもう数日もすれば、ここでそのまま置き去りにされるんだ。
使えるうちに、有意義に使った方が良いに決まっている。
既に石は多めに焼いてあるし、その火を使えばすぐ調理にも入れる。
メイちゃん装備からザルと釣り竿が見えるので、魚も多少は釣って食材補充することができるだろう。
肉は足らなきゃ獲って来るとして、これだけハンターがいれば多少魔物が襲ってこようが即フルボッコで済むと思うし……
うん、大した問題は無い。
そんな気がしてきた!
ならば俺も折角だし楽しもうじゃないか。
こうして長年立ち寄る者がいなかったルルブの森の一角で、
謎
の
風
呂
パ
ー
テ
ィ
ー
が開催されることになった。